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アニー
6部分:第六話
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わかっているからどうしようもないのではないかと思ったのだ。今のところ使う機会はなかったがこれからはわからない。この国は建国前から銃に頼ってきた、イギリスから独立できたのも、開拓を成功させたのも、多くの戦争に勝ってきたのも銃のおかげであった。暗部と言えば暗部になるかも知れない。だがそれがアメリカの歴史であった。
 これには白人も黒人も関係ない。当然アジア人でもだ。彼等は最初からアメリカにいたわけではない。後から来たのだ。経緯は様々としても。ネィティブの土地と命を奪ったのは白人だけではないのだ。黒人の騎兵隊もいれば黒人のガンマンやカウボーイもいた。カウボーイの三人に一人は黒人であり、バファローを余興として撃ち殺していた者達の中にも大勢の黒人がいた。そうした意味で黒人もまた銃を使って侵略をしていたのであった。彼もまたアメリカ人だからそれは知っていた。西部劇は白人の正義の歴史の記念碑では本来ないのだ。あくまでアメリカの侵略の歴史である。侵略の善悪なぞどうでもいいものだ。ただそれが銃によるものであり、それによりアメリカという国が誕生した以上この国は銃から離れることはないのではないかとさえ思っていた。
 ニュースは続いていた。今度は交通事故のニュースであった。
「本日未明」
 キャスターの言葉が続く。そして後ろには映像が映し出された。そこには派手に破損した赤い車が映っていた。
「赤」
 ヘンリーはそれを見てすぐに反応した。ただこの瞬間は反応しただけであった。
「ハイウェイにて赤いキャデラックが衝突事故により破壊される事件が起こりました」
「キャデラックだって!?」
「おいヘンリー、どうしたんだい!?」
 それを聞いた所長と同僚達が彼に声をかけてきた。
「そんなに驚いた顔をして」
「え、いえ」
 彼等に声をかけられヘンリーは少し我に返った。その間にもキャスターの言葉は続く。
「ちょっとね」
「車の中に乗っていたのは」
「何っ!?」
 名前を聞いた。最初聞いた時は我が耳を疑いたかった。
「キャシーだ」
 彼女の本名であった。テレビに映る写真も彼女のものであった。間違いなかった。
「後ろから追突された時の衝撃と車の炎上により死亡しました。今マサチューセッツ州警は彼女の詳しい死因及び衝突したと思われる車を探しております」
「馬鹿な、そんな・・・・・・」
 ニュースを聞いても信じられなかった。彼は信じたくはなかった。信じられないというより信じたくはないという気持ちの方が
大きかった。
「一体どうしてそんなに驚いているんだい?」
「そうだよ。いつものヘンリーらしくないぜ。どうしたんだ」
「実はね」
 彼は詳しいことを話した。キャシーと自分のことを。結婚の約束までしたことを。そしてそれが昨日の夜だったことも。全て話した。
「そう
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