暁 〜小説投稿サイト〜
アニー
5部分:第五話
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
えたしね。けれどそんなに変わったのかい?」
「少なくとも今までみたいなことはないわよ」
「そうなんだ」
「まあ今でも用心は必要だけれどね。それでも大分変わったわ」
「それは何より」
「けれどボストンみたいに落ち着いてはいないわね」
「ここはまた特別だからね」
 彼はそれに応えた。
「何となく静かなのさ。人はそれなりに多いけれど」
「そうね」
「ゆっくりしてるだろ?僕が生まれた時からそうなんだ」
「あら、ボストン出身なの」
「そうさ。さっき言わなかったっけ」
「初耳よ、それ」
「そうか。じゃあ後はレストランでゆっくり話をしよう。君車は?」
「ないわよ」
 キャシーはあっさりとそう答えた。
「おや、そうだったのかい」
「ヘリで来たのよ」
「ニューヨーカーらしいね。じゃあ僕の車に乗るといい」
 そう言って自身のシルバーの車を紹介した。
「アニーっていうんだ。どうぞ」
「女の子なのね」
「車はね、そうだったんじゃないかな」
「そうだったかしら。けれど何か嫉妬されそう。御主人様の隣に座るんだから」
「それはないさ。彼女は車だよ」
 ヘンリーは笑ってそれを否定した。
「人を乗せるのが仕事さ。じゃあ行こう」
「ええ」
 ヘンリーはキャシーを車に乗せて自分も乗った。キャシーは助手席にいる。そしてシートベルトを締めてから車を出した。派手なエンジンの音を立ててアニーと二人は球場を後にした。

「あれ」
 車を運転しながらヘンリーはあることに気付いた。
「どうしたの?」
「うん、ちょっとね」
 とりあえずは誤魔化した。とてもアニーには言えないことであった。
(まただ。一体どうしたんだろうか)
 またハンドルやブレーキの調子がおかしいのである。乗り心地も急に悪くなった。どういうことか彼の言う事を急に聞かなくなった駄々っ子のようであった。
(どういうことなんだろう)
 いい加減不思議に思いはじめた。こうしたことが度々重なるとそう思わざるを得ない。彼はアニーのハンドルを握りながら彼女の異変について考えを巡らせていた。
 だがその時間は長くはなかった。レストランに到着した。見ればあまり格式ばった場所ではなかった。
「ここならその格好でも大丈夫だからね」
「あ、そうだったわね」
 キャシーは自分の格好に気付いた。ジーンズでは流石に格式のあるレストランに入ることはできない。これはアメリカでも同じであった。
「ボストンは格式に五月蝿い店が多くてね。けれどここはそうじゃないから」
「何か結構アットホームな雰囲気ね」
 店の外見も出入りする客もそうであった。身なりもラフで家族連れが多い。そうした店なのであろう。
「そうだね。ここはそういう店なんだ」
 彼は笑いながら言った。
「一人身にはいささか厳しい
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ