暁 〜小説投稿サイト〜
アニー
3部分:第三話
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
を見ながら手頃な旅行先でも探すつもりだったのだ。
 旅行は好きだ。学生時代はヒッチハイク等をしてアメリカ中を回ったものだ。サンフランシスコまで行ってそこの中華街で美味い料理を心ゆくまで堪能したこともあればニューオーリンズでジャズに耳を傾けたこともある。彼にとって旅は実に楽しいものであった。
 それについて考えるだけで気持ちが楽になった。彼は家に帰ると食事とシャワーを済ませ、バーボンを傍らに置きながら地図を開いた。手頃なところに行くつもりであった。
「何処にしようか」
 だが候補地はこれといってなかった。遠くへ行く気にはなれなかった。近い場所で済ませようとさえ思った。ここで一つの街が目に入った。
「ここにしてみるか」
 そこはワシントンであった。言うまでもなくアメリカの首都である。学生時代に一度ホワイトハウスの見学に行ったことがある。だが弁護士になってからは行ってはいない。今度行くとすれば二度目になる。
 決めるとそこからは迷わなかった。ベッドに入ってゆっくりと休んだ。そして朝早くに家を出た。アニーのいるガレージを開けた。
「遠くへ行くぞ」
 見ればいつものスーツとは違いラフな格好であった。右手にはトランクを持っている。旅支度であるのは言うまでもなかった。
 アニーに乗り込むとそのまま家を出た。鍵もガレージも閉めた。数日は誰もいない家になる。ヘンリーは我が家に別れを告げるとそのまま一人旅に出た。少なくとも人間は一人であった。
 高速道路を飛ばしてワシントンに向かう。ボストンを出て瞬く間にハートフォードに到着した。そしてそのまま南に下りニューヨーク州に入る。ワシントンまではまだまだ距離があった。だが彼はその旅路も楽しんでいたのだ。
 アメリカの道は広い。メガロポリスでもそれは変わりはしない。そして車も思ったより少なかった。彼は思うがままに速度をあげながら進んでいた。そして適当なところでドライブインに入って休息をとった。夜まで走って見かけたホテルに入った。こうしたいささか行きずりの行為もまた旅の醍醐味であった。彼はそれも楽しんでいた。
「ワシントンに着いたらどうしようか」
 ホテルの部屋でそう考えていた。実は着いてからのことは何も考えてはいなかった。ただワシントンに行こうと思いついただけであった。他には何も考えてはいなかったのだ。
 地図や旅行ガイドを見てもこれといって考えつかない。ホワイトハウスにしろ前に一度見たことがあるのでもう一度見ようとは思えなかったのだ。
 考えても結論は出ない。もう考えるのは止めにした。その場その場の成り行きに任せることにした。どうにかなるだろうと思うことにしたのだ。
 翌日ワシントンに到着した。見れば学生時代に来た時とあまり変わりはない。かなり前に来たつもりだがどうもその時とさほど変わってはいないので
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ