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相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
] 4.21.AM6:25
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と考えます。ってか、これを探偵である私に振りますか?」
「まぁ気にしないで。でも、そうねぇ。京ちゃんだったら、もう少し奥をみるだろうけど、今回は無理そうだし。」
 アンナさんがそこまで言った時、戸口から不意に声が掛かった。
「母さん、そこまでにしておけよ。」
 そう言って入ってきたのは藤崎だった。松葉杖を使ってはいるものの、他は何ともないようだ。ま、私が長く眠り過ぎてたんだと思うが…。
「京ちゃん、あなた大丈夫なの?先生にまだ動かない方がいいって…」
「平気だ。もう二週間もベッドの上だったからな。全く…演奏会が終わった後で良かったよ。」
 そう言うと、藤崎は私のところへと来て言った。
「英二、後は俺に任せとけ。父さんが明日こっちに来るから、この町でレクイエムでも演奏してもらうからさ。」
「征一郎さんも帰ってるのか。でも…元凶は、あの櫻華山そのものなんじゃないのか?恐らく、ハル、イトがあの櫻華山に葬られたことで、今回のようなことが…。」
 私は、あの夢で見せられた過去を思い返した。憎しみ…と言うよりも、哀しみや淋しさが強かったように思う。それを思うと、あの二人の女性…顔の無かった女性と、顔を斬られた女性…イトとハルが憐れに思えてならなかった。
「そうだな。でも、あの櫻華山なんだが、町の方で発掘作業をやるそうだ。埋められた遺骨を全て回収し、新たに埋葬し直す手筈になってる。これでもう…何も起きはしないさ。」
 藤崎はそう言うと、松山警部と佐野さんに何か言って、そのまま二人を連れて出ていった。
「さぁってと。私もお邪魔の様だし、そろそろ退散しましょ。相模君、そろそろ子供作ったら?」
「な…!いきなり何言い出すんですか!」
 私が狼狽えながら言うと、アンナさんは笑いながら病室から出ていったのだった。
 そうして暫くは静かだったが、不意に枕元から盛大な溜め息が聞こえた。
「亜希…何か言いたい事があるようだね?」
「そうね…有り過ぎて、どこから言ったものか分からないわ。全部言ってもいいかしら?」
「いや、待て!大半は既に分かってるから、端から言うのは止してくれ!」
 私がそう懇願すると、亜希は笑って「冗談よ。」と言った。
 開かれた窓から、春の心地好い風が入り込み、真っ白なカーテンを揺らめかせた。その風は花瓶の花をも揺らし、閑なひとときを作り出していた。
「赤ちゃん…もう少ししたら、欲しいかな…。」
 ポソリと亜希が洩らした。私も子供は欲しい。だが、今のこんな状態では、満足に養うことも出来ないのだ。
「僕も、どんどん仕事取ってこなきゃな。」
 そう私が言うと亜希は一瞬キョトンとしたが、すぐに顔を崩して言った。
「こんな危ないのは無しよ!」
「分かってるよ。」
 そう言うとこの春風の中、私達は笑い合ったのだった。


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