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相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
] 4.21.AM6:25
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が、佐野さんは何か思い当たることがあるようで、私が話を終えたと同時に口を開いた。
「ハルって妾ですが…どこかの家の記録にあったような気がします…。えっと…どこだったかなぁ…。」
 佐野さんは暫く考え込んでいたが、思い出したように手を叩いて言った。
「そうそう!和泉家の古文書に出てきたんですよ!」
「和泉家?」
 私と松山警部は首を傾げた。分家だったら資料に出てくるはずだが、この和泉家は出てこなかった。単に同じ名前の人物が居ただけなんじゃないかと思っていたが、佐野さんが話を続けたので聞くことにした。
「その和泉家はですね、山内家がこの土地に来る以前、この和泉家が大半の土地を所持していたんです。山内家が来た時から徐々に没落し、堀内家と名を改めた時には完全に消滅していたんです。和泉家は貴族の出で、かなり古くから続く家柄だったようです。その和泉家の最期の人物が、話に出てきたハルという女性です。現存する資料には詳しいことは書かれてませんが、どうも後半生を書いた部分が意図的に破かれてたんですよねぇ。」
「それじゃ…栄吉の妾ってのは…」
「多分ですけど、この和泉家のハルじゃないかと。」
 もしそれが事実なら…辻褄が合う。そのハルという女性が、没落した家の再興を願って栄吉に近付いたとすれば…産まれた男子を無理に分家へと入れた理由になる。わざわざ監視をしていた理由も、これで説明がつくからな。
 次に…自らが本家の正妻の地位を手に入れたかったのも、復讐と考えれば理解出来るものだ。それを栄吉が気付き…手にかけた…。だが栄吉は、最初から知っていたわけじゃないだろう。まさか、自分の家が原因で没落した家の娘が…自分の妾になっているなんてな。それに気付いたから…こんなことになった…。
「佐野さん。あの櫻華山ですが…昔、墓地として使われてませんでしたか?」
「うん…そういった記録はなかったように思いますが…。でも、似たような話は聞いたことありますねぇ。」
「似たような?」
「ええ。この町じゃないんですけど、戦の時、死者を穴を掘って埋めてたんですが、あまりの多さに丘になったって言うものです。そこには様々な花木を植え、死者が安らげるようにしたとか…。」
「それ…櫻華山の話です。私が落ちた辺り、恐らく死者が土に還った後に出来た空洞だと思います。調べれば、多くの人骨が見つかる筈ですよ。」
 私がそう答えると、松山警部も佐野さんも身震いしていた。
「あら、警部さん達もいらしてたんですね。」
 暫く話をしていると、病室に亜希が花瓶に生けた花を持って入って来た。
「あぁ…邪魔してるよ。」
 亜希は警部達の横を通り過ぎ、私の枕元にある台へと花瓶を置いた。チューリップに霞草にスイートピーなど、様々な花から心地好い香りが漂ってくる。
「あなた。何か買ってくるけど、欲し
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