File.1 「山桜想う頃に…」
[ 同日 PM1:24
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小さいながら寺もある。勿論、堀川家の菩提寺はその寺だし、その一角に代々続く墓もちゃんとある。山内家時代の墓も残されているため、その敷地はかなり広い。
私も藤崎も、謙継はこの山で亡くなったからここで祀られているのだと思っていたが、妻まで葬られてるとは思わなかったのだ。
だが…何故この山に妻を葬ったのだろう?
「不義をはたらいたのか…。」
藤崎はハッとした表情でそう呟いた。
「不義って…浮気のことか?」
「英二。そう考えた方が辻褄が合うんじゃないか?男尊女卑の根強かった時代だ。浮気なんてしたら即離縁だからな。だが…どの資料や言い伝えにも、例の兄弟以外に事件性のある話はなかった。それに、ハツの名は資料に残されているにも関わらず、口伝には一切出ない。それを考えると…」
「気付いた者が…闇へと葬った…。」
藤崎の言葉に答えた私は、自らの言葉にゾッとした。恐らくは、謙継を立てて妻の方を抹消することで、周囲に与える影響を緩和させようとしたのかも知れない。それだけ大それたことを、謙継の妻はしたのだろう。
だが、その推測を裏付けるものはない。妻が何をどうしたのか?一体、堀川家は何を隠そうとしたのか?そして、何故分家が全て絶えてしまったのか…?
「英二…絶えた分家ってのは、謙継が妾に産ませた子と、不義によって産まれた子が関わってたんじゃないか?多分…あの隅にある小さな墓は、妾だったイトの墓だと思うんだ…。」
「有り得ないだろ!?」
私は藤崎の推理に否を唱えた。いかな妾だとしても、決して家族ではない。嫌な言い方だが、それが現実なのだ。墓を作るにしても、この山に葬ることを家族や親族が許すはずはない。
しかし、私がそう考えた時、携帯の向こうから佐野さんが藤崎の推理を肯定したのだった。
「隅にある小さい墓ですか?それですが、妾の墓だとは言われてますよ。名は知られてませんけど…。」
伝承されてる…?それは何を意味するのか私は考えた。口伝にしろ伝承される程なんだから、きっと何かしらあったに違いない。もしかしたら、当時にも何かが起こり、それは堀川家にとっては都合の悪いことだった…。
「京。この山にある墓ってのは、もしかしたら…闇に葬られた者たちの眠るものなんじゃないか?それも…多くの憎しみを抱いて死んだ者たちの…。
「そうだろうな。この堀川家は、ちゃんとした墓が表にある。にも関わらず、こんな山に社まで立てたのは、表に埋葬することを許されなかった者たちを埋葬するためだ。それも内々にだ…。」
「それじゃ…ここに葬られた人達全てが…殺されたと言うのか?」
私は恐れを含んだ声で、ジッと墓を見詰める藤崎へと問い掛けた。藤崎は私の問いに、墓を見たまま答えた。
「いや、殺した本人達もここへ眠っているはずだ。」
「本人…達?」
藤崎の言い方は、
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