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相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
[ 同日 PM1:24
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く間をおき、その問いに答えた。
「私は、今回亡くなった人物の場所が気になりました。そこで、私はその場所で殺された人物がいると考えたんです。」
「なるほどなぁ…。で、誰がどこで殺されたと?」
「恐らく…風呂では謙継の側近が殺されたんでしょう。女将が亡くなった場所では、謙継の妾だったイトが殺され、納屋では名前が知られていない人物…多分、謙継の息子を見ていた乳母だったんじゃないかと考えいます。」
 私がそう言うと、隣で藤崎は首を縦に振って同意を表していた。松山警部は違ったようたが。
「なぜだ?乳母ってったら、子供の世話係だろうが。騒動があったとしたって、殺される理由ってのが無いんじないか?」
「普通ならそうですが、この乳母…謙継とできてたようです。」
「…!?なんちゅう男だっ!」
 私の答えに、松山警部は電話口で怒鳴り声を上げた。ま、分からなくもない反応だが…。
「まぁまぁ…。当時は未だそういうご時世だったんです。妻のハツは、最初は仕方ないと思ったんでしょう。正妻で子供も授かり、数年は幸せに暮らせたと思います。ですが、彼女の精神は段々と変容していったようで、それは残されていた古文書で分かってます。」
「それじゃ…この桜庭で、一連の事件は終るのか?」
「いいえ…。残念ですが、後二人は犠牲になる可能性があるんですよ。」
「これで終わりじゃないのかっ!?」
 松山警部は素っ頓狂な声で叫んだ。電話口で何度も大声出さないでほしい…鼓膜がもたないっての…。
 だが…あの古文書には続き頁があり、そこには前頁とは違い、その翌年の日付が書かれていた。筆跡も兼造とは違い署名もない。しかし…ハツとみて間違いないだろうと思う。
 あの報告書の次頁にあったのは、流暢な草書体で書かれた手紙だった。明らかに女性の字で、恐らくは包みに署名があったのだと思う。
「ハツが実家に宛てて書いたものですが、手紙が一緒に綴じてあったんです。そこには、叔父である堀川弥右衛門に助力を乞いたいとありました。」
「堀川って…例の堀川宗彌と関係があるのか?」
「宗彌の弟ですよ。それでですね、その手紙には嫁ぎ先の分家、いわゆる三分家の当主の名もありました。それがどうして書かれたかは、続く二頁が紛失していたので分かりませんが…。ですが、その三分家は現在全てが絶えてます。無関係とは考えられないのでは?」
「それじゃ…その分家の縁者が犠牲になるってのか?」
「そう考えた方が無難でしょう。心当たりありますか?」
 私がそう問うと、松山警部は佐野さんを呼んでいるようだった。電話口くらい手で覆ってからにすればいいのに…。
「英二、何か掴めそうか?」
 目の前で、藤崎が手持ち無沙汰と言わんばかりに聞いてきた。
「今、佐野さんに聞いてるようだが…あ、松山警部、何か分かりましたか?」
 
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