File.1 「山桜想う頃に…」
W 4.10.PM9:17
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。私は二人にどう説明したものかと思案したが、直接的に言った方が良いと考えた。亜希も探偵の妻なわけだし、殺人現場に居合わせたことも一度や二度じゃないんだ。藤崎もこの手の事件にはなれてるから、私は率直に言った。
「シアン化合物による毒殺…とみて、まず間違いないだろう…。」
「なんだって!?じゃあ…もう…。」
「ああ…既に亡くなってる。京。僕と亜希は現場保存をするから、お前は早く旅館の人に言って警察を呼んでくれ。」
「分かった!」
藤崎は直ぐに出ていき、私と亜希は現場を損なわないよう部屋の外へと出た。
幸いにも、私達の両隣は現在空室で正面は藤崎の部屋だったため、他の客が聞き付けて騒ぎ立てることはなかった。
「あなた…女将さん、苦しかったのかしら…。」
亜希が囁く様に聞いてきた。若干震えているようにも聞こえた…。
「ほぼ即死だった筈だ…。恐らく、何も解らないうちに亡くなったと思う…。」
私がそう答えると、亜希は「そう…苦しまなかったのね…。」と言ったのだった。亡くなる直前まで、亜希は女将と愉しそうに会話してたんだ。まるで姉妹の様な感じがしていたが、多分…亜希も姉の様に感じていたのかも知れないな…。
「享子!」
暫くすると、旅館の従業員が三人ほど来てくれた。さすがに警察は未だこないが…。
「あ、触れないで下さい!」
男性が遺体に触れようとしたため、私は慌てて制した。すると、男性は怒った風に口を開いた。
「私は夫の堀川陽一です!貴方は一体どういう方なんですか!?警察でも救命士でも医者でもないようですが?」
「私は探偵です。一応は法医学も学びましたので…。」
「だから?これは私の妻です!なぜ抱え起こすことすら駄目なんですか!」
「毒殺だからです!いかな家族でも、触れたら証拠を汚染しかねないんですよ!」
私がそう言うと、陽一氏は唖然として言葉を失ってしまった。陽一氏の後ろにいた従業員二人も、私の発言に動揺を隠せないでいた。
「あなた…。ここじゃあれだし、一旦隣の部屋で…。」
「そうだな…。亜希、皆をそこへ。僕は藤崎が来るまで見張ってるから。多分、そろそろ警察も到着するだろうからね…。」
「分かったわ。」
そう言うと、亜希は陽一氏と二人の従業員に言って部屋へ入ってもらったのだった。
別段、何の変わりもない。ただ、そこに女将が倒れて骸となり果てているだけ…。それが春の日を受け、まるで良くできた置物の様にピクリとも動かない。日常の中にある非日常の異物…これが人間としての最期と言うのならば、あまりにも無情だ。外では小鳥が囀ってさえいるのに、なぜ女将が死ななくてはならなかったのか?一体何が…。
「君か?相模君と言うのは。」
私が考え込んでいると、いきなり声を掛けられたため驚いて振り返った。そこには四人の人物がいた
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