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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
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材は少なく、重要拠点(じゅうようきょてん)ではない事から正規兵もかなり少ないと思われる。
 それはつまり、雨風を(しの)げる屋根の下に余裕があるという事だ。

 そうなれば、傭兵が寝る分もあるだろう。

「(寝床…とまではいかなくても、通路でも物置でも寝れる場所はありそうだな〜)」

 屋根の下で寝られる場所があるならどこだっていい。
 知らずに来た拠点ではあるが、これは思ってたより快適(かいてき)な傭兵生活になりそうだ。



 少しウキウキしながら早速お仕事に()こうと、足取り軽く砦の中に入って行こうとした。

 だが、その前に呼び止めたのは―――。


「おいおい、マジかよ。 こんな所にレヴァンテン・マーチンがいるじゃねえか!」


 僕を嘲笑(あざわら)う声だった。

 嫌な予感に冷や汗を流し、振り返ると…そこにはくたびれた防具を身につけた傭兵らしき男だった。
 見覚えはない……多分。

「え…ぼ、僕…?」

 自分の顔を見ると、そいつは獲物を見つけたかのようなゲスい顔をさせる。
 こっちは顔も覚えてないけど、向こうは知っているような素振りだ。

「やっぱりお前か。 まさか本物に出会えるとはな、噂には聞いてるぜ?」
「う、噂って…それって一体……」

 ニヤリ、とそいつは笑った。
 そしてそいつは、止める間もなく、砦にいる人全てに聞こえるように大声で言い放った。

「おいお前らぁ、あの有名なノロマのマーチンが来ているぞぉ!」
「え、ちょっ……」

 喧伝するように広く、砦に自分の名前を知らしめる。
 そうする事で、砦にいると思われる傭兵達が何事かと顔を(のぞ)かせ始めていた。


 これはちょっと、ヤバイ流れかも……。


「マーチン? あの置き去りのマーチンか?」
「マーチンって、レヴァンテン・マーチンだろ。 確か役立たずで有名な」
「そいつなら知ってるぜ。 よく戦場で逃げ回ってるって噂だよ」
「傭兵なのに驚くほど弱いってアイツだろ?」
「傑作だな、ヨールビン大陸の(はじ)っこでそんな珍獣が見つかるとはよ」

 ガヤガヤと、姿を現す傭兵達の視線が突き刺さる。
 その中心となっている自分はとても()たたまれない空気に(さら)された。

 個人主義で協調性(きょうちょうせい)などあまり無い傭兵連中なのに、この時ばかりは皆揃って口々に勝手な事を言い、自分に向けて注目を集める。

 色々と“悪い意味”で有名なレヴァンテン・マーチンの知名度は高い。
 それを確認(かくにん)出来た事に満足したのか、最初に自分を見つけた男はゲスい笑みを浮かべた。


 いたぶる専用の玩具(おもちゃ)を見るかのような目付
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