1部分:第一章
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それに乗ってみせた。
「じゃあ行くか」
「おい、俺もかよ」
「どうした?」
「いや、俺はいいよ」
卓也は嫌そうな顔をしてこう言ってきた。
「そういうのはよ。ちょっと」
「恐いのかよ」
「苦手なんだよ。とにかく俺は行かないからな」
「ちぇっ、面白くねえな」
隆一は顔を顰めさせた。ここまで来て何を言っているんだと思うが本人が嫌だと言ったら仕方がなかった。それ以上は言うつもりはなかった。無理強いはしない主義だ。
「じゃあ俺だけで行くからな」
「ああ」
「後で話聞かせるぜ。会えればいいな」
「期待してるぜ。じゃあ月曜に学校でな」
「楽しみにしてな」
そんなやり取りの後で店を出て車に乗ろうとする。駐車場で卓也は声をかけてきた。
「そうそう、何でも赤い車が好きらしいぜ」
「俺の車まんまじゃねえか」
それを聞くと笑みを浮かべた。彼の車は赤く塗装されている。それが夜の中でもはっきりとわかる。
「ライトバンは乗らないらしいな、しかも」
「後ろに誰かいるの警戒してるってか」
「多分な。まあ御前のだと大丈夫だな」
「ああ、俺のはな」
彼の車はスポーツカーである。バイトで無理して買ったものだ。買うまでとこれからのローンがかなり大変だが思い切って買ったものである。
「他に誰かいる心配もないしな」
「そうだな。じゃあな」
「ああ、また月曜な」
卓也に別れを告げて駐車場を出る。そしてハイウェイを進む。暫くして道にひとりぽつんと立つ影を見た。
「おやおや」
それを見て笑みを浮かべる。もう出て来たのかと思った。
「じゃあ停めるか」
車をその影の側に停めた。白いワンピースに黒く長い髪の女がそこにいた。全体的に痩せていて幽幻がする。そうしたところまで如何にもといった感じであった。
「どうしたんだい、あんた」
「乗せてくれるかしら」
女は静かな声で言った。
「その車に」
「何処までだい?」
「ハイウェイの終わりまで。いいかしら」
「ああ、いいぜ」
内心はこれからどうなるか期待しながら返事をした。どうせ偽者に決まっているから証拠を掴んで月曜に卓也に言うつもりであった。少なくとも幽霊だとは全く思ってはいなかった。
「横に乗りな」
「ええ」
扉を開けると横に乗ってきた。そして進みはじめた。進みながら彼女に声をかける。
「どうしてここにいるんだい?」
「ちょっと」
「ちょっと、か」
それを聞いて増々胡散臭いと思った。
「それでハイウェイの終わりまでか」
「いい?」
「だから乗せたんだよ」
隆一は笑ってこう答えた。答えながらちらりと彼女の横顔を見る。奇麗な顔だが色が白く表情に乏しい。本当に幽霊みたいな感じであった。
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