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インビシブル
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第一章

                     インビシブル
 奇怪な夢だった。そうとしか言えなかった。
 淀蔵人がその日見た夢は自分が今住んでいるその家の中で何かに襲われる夢だった。
 それが何かがまずわからない。一切見えなかった。
 だがそれは間違いなくいて彼に襲い掛かる。そうして彼は血塗れになっていく。それを家の外から愛犬のワコ、家の中にいる愛猫のチコが見て必死に鳴いている。そんな夢だった。
 目を覚ましてベッドの中で最初に思ったことは。何故そんな夢を見たかということだった。
「何だったんだ?」
 まずは首を傾げる彼だった。
「あの夢は」
「あれっ、どうしたの?」
 その彼に妻である美香子が問うてきた。テーブルの向かい側に座っている彼女はきょとんとした顔になってそれで夫を見てきていた。
 家は完全に洋風でそれで白い。装飾やそういったものは乏しく簡素である。朝の黄金色の光が差し込み爽やかな朝を演出している。しかし彼の顔は晴れてはいなかった。
「夢って」
「ああ、何でもない」
 こう返した彼だった。
「何でもな」
「何でもないの」
「ああ、何でもないさ」
 夢のことは妻には言わなかった。言っても仕方がないと思ったのだった。あまりにも自分でも訳がわからない夢だったからだ。夢ではよくあることだが。
 それで言わなかった。しかしだった。
「別にな」
「そうなの。別になの」
「ああ。だからいい」
 また言った彼だった。
「それよりも御前今日は」
「ええ、ちょっと外に出るわ」
 こう夫に告げる美香子だった。自分の食パンを食べながら。二人は今はパンとスクランブルエッグ、それにコーヒーという朝食だった。
「今日はね」
「そうか。今日はか」
「仕事の打ち合わせだからね」
「それで出るのか」
「そうよ。新しいイラストのね」
 それだというのだ。彼女の仕事はイラストレーターである。そして淀の仕事はライターである。二人で一緒に仕事をすることもあるのだ。
 そうしてだった。美香子は食べ終わると身支度を整えて家を出た。家に残ったのは淀だけになった。
 彼が食器を洗って掃除をした。それで一旦リビングの白いソファーに座って仕事の前のちょっとした休憩に入った。そこに白猫が来た。夢に出て来たそのチコである。赤ん坊の頃にペットショップで買って可愛がっている雌猫である。種類はニホン猫である。
 そのチコが彼のところに来てだった。小声で鳴いてきたのだった。
「にゃ〜〜〜ん」
「ああ、御飯だな」
 チコが何を欲しいのかすぐに察した彼だった。それで彼女の前にキャットフードを入れた皿を出す。すると彼女はすぐにその中のキャットフードを食べはじめたのだった。
 それを見ながら家の外を見る。そこにはセントバーナードのワコ
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