暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
狂い咲く黒の華
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け。
 そうかい。俺はずっと、お前のことも傷つけてたんだな。

 言葉を発さない彼女を見つめてふと気づく。
 誰かと同じだ。誰と同じだ?

 嗚呼、そうだ、あいつとも同じだ。

 やかましい早口で捲し立てていたあいつも、洛陽の夜に酔った時、こんな色の瞳をしてたっけ。

 バカだなぁ。俺にそんな感情を持つんじゃねぇよ。

 だって俺はお前らの想いに応えられない。

 ああ、なんでだ?

 こいつはこんな嬉しそうにはにかんでるのに、なんで応えてやれないんだ?
 一緒に居て楽しくて、ずっと笑い合って過ごせるはずだろ?
 嫌いじゃない。ずっと一緒に暮らしたい。大好きなあの街で……俺達の大切な友達が作り上げた優しくて甘いあの街で。

 お前達と一緒におかえりっていいたいんだ。
 お前達と一緒にただいまっていいたいんだ。

 なのになんで、俺はお前達の所に帰らないんだ?



 そんなの決まってる。

 誰かが泣くから

 誰かが悲しむから

 誰かが苦しむから


 誰かの涙を止めたいから

 誰かに歓びを与えたいから

 誰かを笑顔にしたいから


 だから俺は帰れない

 そして……


 あの子が泣くから。

 あの子が悲しむから。

 あの子が苦しむから。


 あの子を泣かせたから。

 あの子を悲しませたから。

 あの子を苦しませたから。


 俺はいつでもあの子を哀しませることしか出来やしないから。

 せめてこのちっぽけな想いくらい、ずっと支えてくれたあの子の為だけに使いたいんだ。


 あの子ってだれだ?

 あの子って、ほら……

 あぁ……

 ああ……ああぁ……

 ぁあ……




 ドロドロと溢れ出す泥が身体に纏わりついて離れない。

 髑髏の群れが瞳に炎を入れて囃し立てる

 逃げても逃げても追いかけてくるその群れは、よく見れば大切な大切なバカ共と、踏み台にしてきた矛盾の犠牲者達

 弾劾の声を上げながら追い立てる

 飲まれたら終わりだからと逃げるしかなく

 逃げた先にあの子が立っていて

 俺を見上げてぽつりとつぶやいた





――オレガカエルセカイナンテダレモノゾンジャイナイ


 おおうそつきがダレかヲあいするシカクなんざない

 なかせたヒトのタメにタタカわないと

 コロシタひとのタメにタタかワないと

 コロサレタひとのタメにたたカワナいと


――ツナイダオモイガムクワレナイ


 せめてニセモノのいのちをセカイにさサげなイと

 そうしてセカイをかエないと

 おれがせかいをかえない
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