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相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
T 4.9.AM11:43
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し訳御座いません。」
 女将は済まなそうに頭を下げたが、私はそういうつもりで聞いた訳じゃなかったので、慌て女将に言った。
「そう言う訳じゃないんです。ただ、ここは京都の外れですし、何と無く京言葉のイメージだっただけなんですよ。」
「そうですねぇ。中央では舞子や芸子を中心に昔ながらの言葉を遣いますけど、ホテルになどなりますと、今はそうでもないんです。」
 まぁ…そんなもんだろうな。京言葉は美しいが、いかんせん解りづらい。外国人などの観光客も増えてるため、需要の多いホテルなどは常用語の方が当たり前なんだろう。客と意思の疎通が出来なければ、それこそ商売にならない。そうじゃないとこもあるだろうが、結局は数人喋れる人間がいる程度だろうがな。
「宜しければ、あの山桜を見に行かれますか?」
 どうやら亜希が女将と山桜の話をしていたようで、女将はそれならばとそう提案してくれた。
「え?あそこ、行っても良いんですか?」
「はい。当旅館の持ち山で御座いますので、お客様でしたら問題御座いませんから。」
 その女将の言葉に、私達三人は顔を見合せて頷いた。ま、こういうのを断るやつもいないがな。
「それじゃ、お願いします。」
「承知致しました。後程従業員を呼びに参らせますので、詳細はその時に。では、私はこれで失礼致します。」
 女将はそう言うや、頭を下げて部屋を出ていったのだった。私達は再び外の風景を楽しみながら、学生時代などの他愛もない話しをしていた。
 しかし、春風の心地好さもさることながら、やはりあの山桜に気を取られ、気付けば山桜の話ばかりしていたのだった。
 私や亜希、それに藤崎の生まれ故郷にも、目に触れる程の山桜は無かった。と言うよりは、山が無かったのだ。平野なんだから仕方無いのだがな…。
 そんなことを話ていると、亜希がこんなことを言い始めた。
「まだ少し寒いけど、お花見なんて出来たらいいわね。」
「それいいねぇ。でもさぁ、一応この旅館の持ち山なんだし、そういうのは駄目なんじゃないかなぁ…。」
 藤崎は頬杖なんてつきながら亜希に言った。亜希も「駄目かなぁ…。」なんて言いながら溜め息を吐いている。この二人、そんなに花見がしたいのか…?
「ま、早めに戻ってさ、ここでこの景色を見ながら一杯ってのも乙じゃないか?」
 私は苦笑しつつ二人をなだめたのだった。
 こんな話をするのはどれくらいぶりかな…。学生時代には休みの度に集まっては、こんな他愛もない話を延々と語り合っていた。
 ここにはいないが、毎週の様に会っていた仲間も多い。たまに手紙が届いたりするから、皆元気だと思う。日常の雑多な空間から脱け出してこうしていると、不思議な程に鮮明に思い出される。それだけ日々が充実している証拠かも知れないな…。
 暫くすると話も一段落し、私達は再び外の
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