殺された男
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。
そのうえでだ。彼自身を見て言った。
「いや、俺は生きる」
「生きる?」
「そうだ、生きるんだ」
言いながらだ。後ろにいる穏を見た。
「こいつの為にも」
「おいおい、何を言うんだよ」
彼はせせら笑ったままだった。そのうえで久満に対して言うのである。
「俺が出て来たからには死ぬんだぜ。そんなことはな」
「いや、生きる」
あくまでこう言うのだった。意固地なまでに。
「絶対にだ。俺はこれからも生きる」
「それじゃあ一体どうするつもりなんだ?」
余裕の態度での問いだった。
「どうやって生きるつもりなんだ?」
「それは」
「俺は言うなら御前の魂なんだよ」
このことを久満に話してみせる。
「魂が抜けたんだ。それならもうすぐに死ぬだろうが」
「魂が抜けたなら」
「今の御前は抜け殻なんだよ」
そうだというのである。
「只のな。抜け殻なんだよ」
「俺は抜け殻か」
「肉体は魂がないと只の抜け殻なんだよ。それでどうするつもりなんだよ」
「うう・・・・・・」
「ないな。もう御前は終わりだよ」
まさ久満に対して言う。
「残念だったな」
「魂、それに」
しかしだった。穏はここまで彼の話すことをしかと聞いていた。それから耳を離すことはなかった。まさに一字一句まで聞いていたのだ。
そのうえでだ。彼の言葉を頭の中で反芻していた。そうしてだった。
あることがわかった。その途端彼女は閃いた。
そしてすぐに。久満に対して言う。
「ねえ」
「何だ?」
「体当たりして」
こう久満に言った。
「相手に」
「体当たり!?」
「そう、体当たり」
それをしろというのである。
「相手にね。それで御願い」
「体当たりしたら何かあるのか?」
「多分」
彼女はまた言った。
彼はそのまま久満の中に取り込まれていく。だが何とか必死に逃れようとする。
「嫌だ、俺はこのまま」
「!?こいつ」
久満はその彼を見て怪訝な顔になった。
「逃げようとするぞ」
「逃がさないで」
穏は怪訝な顔になる久満にすぐに言った。
「絶対に、逃がしたら終わりよ」
「終わり?」
「そう、終わりよ」
こう言うのだった。
「だからね。ここはね」
「何かよくわからないけれどわかった」
久満は穏のその言葉に頷いた。そうしてだった。
すぐに彼を捕まえてだ。己の中にさらに取り込んだ。
「よし、このまま俺の中に入れ」
「誰が入るものか」
彼はそれでも逃げようとする。しかしであった。
それができずにだ。彼は完全に取り込まれてしまったのだ。
久満は一人になっ
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