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殺された男
殺された男
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だからありのまま話せた。
「かけてないんだよ」
「携帯は使ってないのよね。いえ」
「いえ?」
「使われてないのね」 
 穏はこう言い換えたのだ。
「そうよね」
「ああ、それは間違いない」
「ううん、やっぱりおかしいかなあ」
 穏は久満のその言葉を聞いてあらためて考える顔になった。そうしてそのうえで再び話す。その話していることもまた考えながらだった。
「そこで携帯が使われていたらね」
「結局俺がかけていたってことだよな」
「そうなるわ。けれどそれはないから」
「じゃあ何なんだ?」
「考えられるケースは」
 穏がここで話したことは。極めて不可思議なことだった。
「もう一人いるのかなあ、それって」
「もう一人?」
「そう、久満君がもう一人いるの」
 こう言うのだった。
「もう一人ね」
「?それってまさか」
「ドッペルゲンガーは知ってるわよね」
「確かあれだろ?死ぬのが近いとかそういう時に出て来るっていうあれだよな」
「そう、あれ」
 まさにそれだというのである。
「それが考えられるけれど」
「おい、待て」
 周りからはだ。囃し立てられてこう言われるようになっていた。
「おいおい、今日も彼女と出社デートだったな」
「それに帰宅デートだな」
「熱いね、また」
「ははは、ちょっとな」
 このことには笑って返すことができた。
「色々とあってな」
「色々ねえ。それでか」
「その色々ってのはあれか?結婚か?」
「結婚近いのか?」
「片付いたら結婚するさ」
 もう一人の自分のことは言ってもわからないと見てだ。こう職場の同僚達に返した。
「その時にな」
「まあ結婚するのなら頃合い見てしろよ」
「幸せになれよ」
「結婚するからにはな」
「ああ、わかってるさ」
 微笑みながら彼等に答える。
「絶対にな」
「披露宴楽しみにしているからな」
「絶対に呼んでくれよ、いいな」
「その時にはな」
「わかってるさ。楽しみにしておいてくれよ」
 こんな話もした。彼は穏とのデートは心から楽しんでいた。そしてそれと共にこれまでよりも二人の絆が強まってきていることも感じ取っていた。
 そうしてだった。同じベッドの中で寝ながら。彼は穏に対して言うのだった。
「なあ」
「どうしたの?」
「この話が終わったら本当にな」
「ええ、本当に?」
「結婚するか」
 こう彼女に言うのであった。
「その時は」
「結婚ね」
「そっちさえよかったらな。どうかな」
 また彼女に問う。
「その時は」
「ええ、いいわ」
 穏はにこりと笑って彼の申し出に頷いてみせた。そうしてそ
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