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左道の末
4部分:第四章
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第四章

 そしてだ。その早馬は今まさに越前に入ろうという信長の前に片膝をつきだ。こう述べたのであった。
「岐阜の街中で一人の年寄りが死んでおりました」
「年寄りじゃったか」
「朝倉の忍の者でした」
 それだったというのである。
「名前はあやかしの元太」
「それがその忍の名前じゃな」
「左道の使い手です」
「ふむ、やはりな」
 信長はその言葉を聞いて納得した顔で頷いた。
「そうじゃったか」
「やはり左道でしたか」
「その者が殿の命を」
「どの手の者かはわからなかったがな」
 それはわからなかったと。周りにいる家臣達には話した。
「しかしじゃ。左道の者だったのは確かじゃ」
「はい、それは」
「確かに」
 家臣達もそれには頷く。
「しかしです」
「殿、宜しいでしょうか」
「お伺いしたいものがあります」
 家臣達はここでだ。誰もが怪訝な顔になりそのうえで信長に対して問うのであった。
「何故おわかりになられたのですか?」
「左道の者が死んだと」
「それはどうしてでしょうか」
「魔道だからじゃ」
 信長の最初の返答はこれだった。
「魔道だからそうなったのじゃ」
「左道は魔道」
「だからですか」
「そうじゃ。魔道はただその相手を殺めるだけではない」
 それだけではないというのだ。
「やがては己も殺めてしまうのじゃ」
「そうなのですか」
「それは」
「防がれればそれだけのものが己に返って来る」
 そうなるというのである。左道というものはだ。
「その結果じゃ。それであの者は死んだのじゃ」
「そういうことだったのですか」
「それによって」
「これでわかったのう」
 あらためて家臣達に告げた。
「何故わしがわかることと言い続けてきたのか」
「はい、それは」
「よく」
「そういうことじゃ。よく言うであろう」
 信長は殊更落ち着いた声で話した。あまりにも名高いかん高い声であるが今は極めて落ち着いた響きのあるものになっていた。
「人を呪えばじゃ」
「穴二つ」
「そういうことですね」
「わしが防がずともやがては取り込まれて事切れておった」
 そうなったとも話した。
「結局のところはな」
「魔道故に」
「そうなったと」
「左様じゃ。それではじゃ」
 信長はここまでで話を終えた。そのうえでだった。
「行くぞ。越前じゃ」
「はい、それでは」
「今より朝倉を」
「完全に討ち滅ぼす」
 そうするというのだった。織田にとって朝倉は同じ守護大名に仕えてきた間柄である。だが朝倉の方が家柄は上でその因縁もあり仇敵同士であり続けていたのである。ただ将軍や天下を巡って対立しているだけではなかったのである。
「あの義景めの首を見てやろうぞ」
「はい、それでは」
「今こそ越前に
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