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乱世の確率事象改変
不明瞭な結末の後に
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も城に行けば食べ物はあるさ。なんならそこいらの出店で買い食いしてもいい」
「お菓子もあるー?」
「ミケはお肉が食べたいっ」
「むにゃ……シャムはぁ……何を食べようかなぁ……」

 南蛮との友好を結ぶ上で最低限必要だったのが食の問題。美味しいモノを分け与えると示した以上は、彼女達が満足できるほどのモノを用意せねばならない。
 鈴々と愛紗の二人に戦後の処理は任せて、星は南蛮のご機嫌取りを選んだということ。
 まだ疑心半分の孟獲とは違い、他の三人は既に星に打ち解けていた。
 少女故に単純だったのだ、彼女達は。同じ顔の者達が死んだというのに憎しみ等の負の感情を引き摺らないのは不思議ではあったが、そういうモノと納得するしかないのが現状である。

 孟獲が打ち解けないのはきっとそのせい。彼女だけが違うからこそ、家族と呼んだモノの死に対して思う所があるのだろう。
 初めて見る街に目を光らせている三人の少女を相手しながら、星はゆったりと孟獲の隣を進んで行く。

「どうかな、孟獲殿」
「人がいっぱいで鬱陶しい。木や草がないのも落ち着かないにゃ」
「それは致し方なしと呑んでくれ。別にそなた等に此処で暮らせとは言わんよ。我らには我らの、そなた等にはそなた等の生活があるのだから」
「ふん……まあ……思ったよりも楽しそうに生きてる人間が多いのには驚いたにゃ」

 唇を尖らせてそわそわと身体を揺らしている孟獲は一つの店に視線を固定させたまま。つれないな、と思いながらも星はその店に近付き、お代を払って五つの団子を買った。

「ほれ」
「む……別に欲しいなんて言ってないじょ」
「ありがとう!」
「食べていいの?」
「いただきまぁす」
「こ、こらっ! お前達! 美以が先に食べるのにゃ!」

 きゃいきゃいとはしゃぐ少女達に気が緩む。
 いいものだ。ゆっくりでいいから、一歩ずつ関係を進めて行こう……とても穏やかな心でそう思った。

 だからだろう……“遠くの喧騒”に苛立ちを覚えたのは。
 だからだろう……優先事項がある今の状況なら警備隊に任せてもいいはずなのに、自分で止めに行こうなどと思ってしまったのは。

「うみゅ? なんかあっちの方が騒がしいにゃぁ」
「喧嘩の空気がするー」
「やっぱり街の人間はダメダメなのにゃ」

 いいモノを見せたくても、人には悪い部分も必ずある。
 だから彼女達に見せてしまう確率も存在したはず。
 自分に言い聞かせるように、星は彼女達に向けて不敵に笑った。

「そうさ。人が集まれば悪いことも起きる。それを止めるのが私達の役目。平穏な日常での諍いなど誰だって見たくないから……済まないが少し行って来る。警備隊のモノに城への案内は任せるから、先に向かっていてくれ。直ぐに追いつく」

 言う
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