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乱世の確率事象改変
不明瞭な結末の後に
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するのは武人だけだ。己の武に誇りを持って、己が存在証明を輝かせたい武人だけだ。
 少女達はあくまで兵士で、好きに生きていたい南蛮の民である。生存欲求の方が優先される。

 戦う意思を無くした少女達の前、鈴々は汚れるのも構わずに大地に寝ころんだ。
 木々の隙間から切り取られた空を見上げて、大きな、大きなため息を吐いた。

「……例えお兄ちゃんだって……逃がさないのだ」






 †






 その場は鮮烈という他無い。
 木々の隙間に出来上がる死体、屍、肉塊。
 孟獲との戦闘は愛紗にとっても激しいモノであった。
 嗅覚なのか何なのかは分からないが、新兵の被害だけが増え続ける。軍の弱所をかぎ分けるのが異様に上手く、本能的な動きを以って連携でさえ崩される。
 慣れない森での戦い、とは言い訳に過ぎない。愛紗としても劉備軍一の部隊を率いているという自負がある。しかしながらやはり……見た目に対する甘さが抜けていなかったのは彼女が一番であろう。

 侮りではない。無意識の内に本気を出せないでいるのだ。否、非情になり切れていないのだ。一つ一つの判断が最善と思っていてもいつもより甘い。戦場では絶対に持ってはいけない優しさが知らぬ内に彼女の決断を鈍らせる。
 鈴々が作り上げたのは五分の状況。決して有利というわけではない。あくまで一個部隊が集中できる戦場を作り上げたというだけであり、個々の実力を信頼してこそ出来るモノ。
 理解する頭は持っている。だからこそ、愛紗は歯痒さを抑え付けて目の前の敵と相対している。

 白虎のような毛皮の衣服、ふにふにの肉球、愛らしい見た目は彼女の天敵に思える。平時であれば愛でたくて仕方なくなるだろう。
 だが瞳に燃える憤怒と人間を一撃で肉塊に出来る膂力は恐ろしいという他ない。単純な力だけならば鈴々をも越えそうではあった。

 その少女、孟獲からの被害を減らす為に、愛紗は真ん前を陣取って対応していた。
 一振りの剛腕が大地を爆ぜさせ、一度の薙ぎ払いが木々を吹き飛ばす。そんな孟獲の攻撃の全てを受け流し、逸らす。
 さらには少女兵士達の奇襲がそこかしこから飛んでくるのに、である。

 舞い踊るかのような動きを以って刃を一太刀も受けず、流れる黒髪に麗しさも力強さも乗せて、見つめる劉備軍の兵士達を魅了してやまない。
 矢も、石も、剣も、槍も……そして南蛮大王の大型武器さえも、軍神と称される戦乙女には通じない。
 非情になり切れずとも本気の武力はそのまま、戦を行えばいつも通りに彼女の舞台が其処に現れる。
 何時の間にか救援に来ていた趙雲隊の兵士達も、愛紗の舞踊に目を奪われていた。

「ぐぬぬぬぬ……なぁんで当たらないにゃぁ!」

 そんな大振りで当たるはずなかろう、とは
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