不明瞭な結末の後に
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切り抜けた張飛隊に追い縋った敵達、その者達を前と横から挟み撃ちしただけ。
突撃して抜けた先で兵を伏せ、反転逆撃で鈴々が迎え撃つ。しばらく時間を持たせて後に伏せた兵士で攻撃をした、ということ。
反転逆撃の先頭を切った鈴々の凄まじさは言うまでも無く、森の中という敵に有利な環境であっても彼女を止められるものなどいやしなかった。
燕だと謳われてきた彼女の動きは少女兵士達如きが追いつけるわけがない。戦場の最中を縦横無尽に駆け巡りその跳躍に逃げ場無しとすら恐れられる燕人は、この程度の相手ならどれだけでも戦える。
「お兄ちゃんと雛里は……やっぱり凄かったのだなぁ」
ぽつりと一言。寂しい音が森に溶けた。
用いた策が彼女の戦いに合っていたというのも大きい。
雛里の考案した釣り野伏せと、秋斗の知っていた釣り野伏せ。どちらも鈴々は聞いていて、徐州で袁術軍を迎え撃った時にどうすればいいかを懇切丁寧に教えられている。
如何に物覚えがあまり良くないと言われる鈴々であれど覚えている。否、忘れるわけが無い。鈴々にとってあの戦は大切な最後の戦。秋斗とや雛里と共に戦った、“彼女が好きだった劉備軍”として最後の……。
あの時は使うことなく終わった釣り野伏せ。しかし今回は……使ってみて驚くほど上手く行った。感嘆が湧くのは抑え切れない。共に戦っていた二人は鈴々に出来ない思考の成果をいつも与えてくれたのだ。
チクリと胸が痛むのは二人が居ないから。本当は自分の力では無い、なんて感じてしまうのも詮無きかな。遣り切る実力を持ち、実行しようと決断したのは鈴々であっても。
そんな内心を知るよしもない敵の少女達は、寡兵で多勢を崩壊させた彼女に心底恐怖を覚えていた。
自分達のホームグラウンドである森で勝てないとなれば気勢は削がれ、圧倒的な武力を前にすれば諦観に支配される。
隙を突けば、油断を誘えば、一度逃げて立て直せば勝てる……そういった思考さえ入り込めない程に打ちのめされていた。
本能的に生きてきた少女達が取る選択肢は何か。こんな時は決まって一つだ。
「お前達、もうやめるのだ。このままお前達が全滅するまで戦っても鈴々達に勝てない事は分かってるはずなのだ。
鈴々達はむやみに殺したくなんてないし、お前達の住処をこれ以上荒らしたくもない。
まだやるっていうなら……」
座ったまま脇に蛇矛を構え、少女達に向けて突きつける。唇を少し尖らせたまま、視線には殺意を乗せて。
「燕人の跳躍に逃げ場は無いのだ」
カラン……と武器を地に落とすモノが一人二人。
狩られる側と狩る側は既に逆転した。
ケモノえあれば、死にたくないと最後まで抵抗し暴れるが……南蛮の少女達はケモノでは無くただの人間。
強者がかける情けに憤慨
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