不明瞭な結末の後に
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正面から受け止められるモノでは無い。狼でさえ横から食らいつくか知恵を使って狩るというのに、どうしてひ弱な人間が止められよう。
例えを変えるのなら遠き大地に生息するバッファローにも等しい。獅子でさえバッファローの突撃には恐れを為し、群れで漸く一頭を仕留める。
突撃突破力は劉備軍随一で、魏武の大剣の部隊と似たり寄ったりな精強さ。荒くれモノ共の巣窟な張飛隊は、前を向くことでこそ力を発揮するのだ。
ただ……鈴々がそれ以上深いことを考えているわけでは無いと愛紗も星も思っていた。
それこそが間違いだと知るモノは、やはり此処には居ない。
小さくため息を吐いた鈴々が血だまりの地面の上、どちゃりと音を立てて腰を下ろす。汚れることすら気にしない彼女の所作は苛立たしげに過ぎた。
未だ武器を向ける少女達を見やりながら。死体の山の後ろから幾多の部下の視線を受けながら。感情が豊かに出る彼女にしては珍しく、表情から読み取ることは出来ない。
「……お兄ちゃんは此れのことなんて言ってたっけ?」
「……“釣り野伏せ”かと、張飛様」
「あー……確かそんな名前だったのだ。まあ、鈴々達がぶち抜いた後に仕掛けたわけだからちょっと違うかも」
子供同士が血みどろで殺し合っていた戦場と言い表せば、哀しい光景としか思えない。しかれども彼らの将は何も気にしていない。普段通りの声音と仕草……それが怖ろしい。
如何に張飛隊であろうともその異質さに若干の怯えが見える。
鈴々が気にしていないから恐れを見せないだけで、内心は震えていた。
少女でありながら将という存在の恐ろしさを、張飛隊は初めて知ったのかもしれない。
戦であれば人を殺すことに忌避は非ず、圧倒的な暴力で制圧するその姿は人外にさえ思えてくる程。
「まだやるのかー?」
「ぅ……ふぇ……」
「むぅ、黙ってちゃ分からないのだ」
言の葉を投げかけてみても返ってくるのは躊躇いだけで、呆れた、というように彼女はため息を零した。
一仕事終えたわけだが余り疲れても居ない。大量に積み上げられた死体の山はほぼ全てが少女兵士達である。
戦を行っているのだ。命を賭けているのは皆同じ。自分と似たような背格好であろうと其処に同情を挟む余地などない。というよりも、自分と同じ背格好だからこそ鈴々は何も忌避しない。
彼女が悲痛な面持ちで戦っていた理由はたった一つ。
話し合いさえ行えずに戦いになってしまったその一点。本当は争わないでもいいのではないかという疑問から来る……言うならば行き違いに対する悲壮である。
そして、こと戦が始まり時間が経てばそれも薄れる。目の前の事柄こそが彼女にとって最優先となるのだから当然と言えようか。
鈴々達の用いた策は単純明快。真っ先に
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