第十六章 ド・オルニエールの安穏
第一話 パーティーにて
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「え〜、此度の戦はまさに歴史に刻まれる程の大きな、そして悲惨な戦じゃった。前ガリア王であるジョゼフ―――彼の王が企てた陰謀はロマリアのみならずこのハルケギニア全土を焼き尽くすまさに狂ったものじゃった」
魔法学院―――その本塔二階にある舞踏会ホールに響くのは学院長オスマンの声。
普段行われる学院長のお話とは違い、ホールに集まった学院生徒たちは真面目な顔で学院長の話に聞き入っていた。何時もならばそこかしこにいた居眠りをする者やお喋りをする者たちが一切見られない。
それもそうだろう、ロマリアとガリアが戦端を開いた時、彼らは恐怖した。アルビオンとの戦争が終わった直後でもある。祖国の国力は未だ回復していない。もし、ガリアの矛先が向けられたならば、ひとたまりもなかった筈だ。
しかし、そうはならなかった。
ガリアの狂った牙が突き立つ前に、カルカソンヌにてガリアはその狂った意志を打ち砕かれた。
ジョゼフ王は捕らえられ、ガリアには新たな女王が即位し、戦は短期間の内に終幕となった。
「戦は嫌じゃ。何せ戦となれば何時死んでもおかしくはない。死ねば最早女人の臀部を見ることも触ることも、ましては他の色々な事を出来なくなってしまうからのう。そんな事諸君らも嫌じゃろう。何せ諸兄らの多くは未だ女人の神秘を確かめた者は少なかろうに、そのような状態で死ねば死ぬにも死にきれんじゃ―――」
「「「「「…………死ねよクソじじぃ」」」」」
ホールにいる女子生徒だけでなく女教師たちが顔を俯かせながらボソリと呟いた。
「―――……ごほん。うん、話を続けようかのう」
顔を強ばらせたまま青ざめた顔を微かに上下に揺らしたオスマンは、何かを誤魔化すようにゴホンとわざとらしく咳を一つ鳴らすと、何事もなかったような顔で話を続けた。
「しかしっ! そうはならなかった……何故ならばっ! このトリステインには英雄がいたっ! トリステイン―――いやっ! ハルケギニア一と言ってもいい英雄がッ!!」
腕を振り上げ老体を震わせながら叫ぶオスマンの姿に、先程までの冷たい目をしていた生徒たちの目に熱がこもり始める。両手をギュッと握り締め、何かを期待するように身体を震わせながら、自身を落ち着かせるようにゴクリと唾を飲み込んだ。
「その英雄たちのことを、君たちは誰よりも良く知っていることじゃろうっ! 何故ならば、彼らは遠い世界の、国にいるような噂話でしか聞けない者たちではないっ! 君たちと同じ学び舎で共に学び、鍛え上げた者たちっ! そう―――君たちも良く知るあの英雄たちがまたもややってくれたのじゃッ! さあっ! それでは改めて英雄たちを紹介しようッ!!」
大きな身振りで後ろを振り返ったオスマンは、その枯れ枝のような指で壁のように
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