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八神家の養父切嗣
十二話:狂気の笑み
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とは思えぬことをこの男は人間のまま下す。
 誰よりも人間らしいのに機械のような選択をし続ける。
 まるで鉄の仮面を着けたかの様に動かなくなった表情の下では血の涙を流しているというのに。
 最も効率のいい演算をすればこの男の行動は簡単に読めるというのに面白い。
 だからこそだろうか。彼が演算から外れた行動をすることも望んでしまうのは。

「いい加減笑うのをやめろ。今すぐにでもお前を殺したい気分なんだ」
「くくく、開発名『ピースメイカー』。やはり、そのデバイスは衛宮切嗣に相応しい」
「『トンプソン』だ、間違えるな」
「いやいや、生みの親からすればこちらの方が馴染みがあるのさ。真名とでも言うかね」
ふざけた設定(・・・・・・)もそのためか?」

 再び突き付けられた拳銃に、さして気にした様子もなくおどけて手を上げてみせる。
 そんな様子に切嗣はやはりこいつには何をやってもダメだろうと諦め待機状態に戻す。
 狂人に常識を求めるだけ無駄なのだ。
 例えそれが、生物が備えている恐怖という本能であったとしても。

「それで、目的は下らない問いかけの為だけか」
「守護騎士のプログラムや管制人格である融合機についても少し調べてみたかったが、君の決断が揺るがないのなら私が邪魔立てするわけにもいかないだろう?」
「なら、とっとと消えてくれ。最初に言ったが僕はこれでも忙しいんだ」
「おや、つれないねえ。だが、覚えておいてくれ。君が心変わりするというのなら私はいつでも力になろう」

 縋るべき理想さえ奪われた時に彼がどんな行動をとるのかを見るのもまた面白いだろう。
 生命の神秘とは何も肉体だけにあるのではない。
 人の心の在り方もまた彼の欲望を満たすに相応しい。
 真っ直ぐな信念を持つ人間も面白いが、やはり心に矛盾を抱いた者こそ人間らしい。
 特に―――ねじ曲がった信念のまま無理やり真っ直ぐに歩こうとする愚者は。


「断言しよう、君に敗北は無い。何と言っても君は―――正義の味方(・・・・・)だからね」


 最後にそう言い残して笑いながら去っていくスカリエッティの姿が消えるのを待つこともなく切嗣は吸殻を踏みにじり感情をぶつけるのだった。

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