大切なもの〜
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たようなものだよね・・・言おうとは思ったけど、もう会わないと思ったから言えなかったんだ。・・・本当にごめん」
シリカは首を横に振る。・・・俺は再びシリカから目を逸らす。
「・・・とりあえず、街まで送るよ」
「あ、あの・・・」
シリカに呼ばれ、振り返ると・・・
「あ・・・足が、動かないんです」
「・・・はは」
思わず笑い、俺は手を差し出す。シリカは俺の手を掴み・・・少しだけ笑った。
「さあ、行こう」
帰り道、俺とシリカは殆ど無言だった。代わりにキリトがシリカと話し、キリトはシリカに慰められたことを笑った。・・・そして宿屋に戻ってきて・・・
「コウハさん・・・行っちゃうんですか・・・?」
俺はゆっくりと頷く。
「・・・かなり長い間前線から離れたからね・・・すぐに戻らないと」
「・・・そう、ですよね・・・」
シリカが俯く。
「・・・あ・・・あたし・・・」
・・・シリカが何を言いたいかは何となく分かった。・・・だけど、それを聞くわけにはいかない。
「シリカ、レベルの差なんてこの世界だけの話さ。・・・あのさ、シリカが教えてくれたチーズケーキ、美味しかったよ。・・・だから、今度は俺がお菓子をご馳走するよ、リアルで。だから・・・また会おうな?」
「はい。きっと・・・きっと」
更にシリカは少し確認するように言う。
「あの・・・コウハさんは初日に人助けをしていたって言ってましたよね・・・?」
「え?・・・うん」
「・・・それって、混乱した人達を宿屋に避難させたこと・・・ですか?」
「・・・!?なんでそれを・・・あっ」
そこまで言われて気付いた。シリカが知ってる理由なんて・・・
「あたし、あの時混乱してて・・・ずっと泣いてて・・・その時でした。あたしをあの人混みから・・・ある人が助け出してくれたんです。その人は言いました。『必ずこの世界から解放される。俺も頑張るから・・・君も死なないように、生き延びるんだ』・・・って」
「シリカ・・・君はあの時の・・・」
「あたし、ずっと助けてくれた人にお礼を言いたかった。あのままあそこにいたらどうなっていたか・・・想像したくもありません」
シリカは俺の目を見つめる。
「・・・ありがとうございました。あたしを・・・助けてくれて・・・」
・・・シリカは俺を慕ってくれている。ここまで来てそう思った。・・・こんな子がいてくれるなら・・・信じてくれる人がいるなら、まだ俺は頑張れる。
「さ、ピナを呼び戻そうか」
「はい!」
シリカは少々慌てながら花と羽根を取り出す。
「じゃあ、雫を羽根に振り掛けて」
「はい・・・」
雫を受けた
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