大切なもの〜
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手を握る。
「転移!フローリア!」
一瞬、体の感覚が消え、視界がぶれる。・・・次の瞬間には転移は完了した。
「うわあ・・・!」
シリカが歓声を上げる。何故なら、四十七層の広場は無数の花々で溢れかえっていたから。
「ここは通称《フラワーガーデン》って呼ばれてるんだ。街だけじゃなくてフロアまで花だらけ・・・今度時間があったら色々案内するよ」
・・・本当はここら辺りをホームタウンにしたかったが・・・物価はそこそこ・・・しかし部屋が空いてなかったのだ。
「はい。また今度のお楽しみにします」
ふと気付いた。俺はまたシリカに会う気でいることに。・・・本当はこの件が終わったら会うつもりはなかったのに・・・
「・・・なんでだろう」
考えていると、花を見ていたシリカが近付いてきた。
「さ・・・さあ、フィールドに行きましょう!」
「あ、ああ」
シリカは勢いよく歩き出す。・・・俺は苦笑しながら着いていく。シリカと足並みを合わせて歩くと、シリカが聞いてきた。
「あの・・・コウハさん、すぐは・・・って誰ですか?」
「え・・・!?な、なんで・・・」
「す、すみません。その・・・寝言を聞いてしまって・・・気になっちゃって。コウハさんの恋人・・・ですか?」
一応、アインクラッドでは現実世界の話を持ち込むのはタブーだ。色々理由はあれど、一番はこの世界も現実だという事実を認められなくなる為・・・ただ、シリカが悪意を持って聞いたのではない位、簡単に分かったので答える。
「ううん、妹だよ」
「妹・・・もしかして、あたしに似ている知り合いって・・・」
「ああ・・・確かに妹にも似ているよ。・・・ただ、仲は良くなかったけど」
「・・・」
「俺ん家、祖父が厳しくてね。俺と兄貴、そして妹は俺と兄貴が八歳の時にほぼ強制的に剣道場に通わされたんだよ。・・・俺や妹は剣道にハマったよ。俺は自分が強くなって、相手を倒して家族に褒められるのが嬉しかったんだ。・・・けど」
「けど・・・?」
「剣道始めて一年半くらいの時だったかな。妹を庇って右目をやっちゃってね。リアルじゃ右目が殆ど見えないんだ」
「・・・!」
「薬品が目に入ったか何かの荷物が目を潰したか・・・今となってはどうでもいいこと。・・・だけど、たがが九歳の子供が距離感を乱されて対応できる筈がない。俺は右目の視力を失ったことで一度も試合に勝てなくなった」
眼鏡やコンタクトを使っても大した改善にはならなかった。
「だけど俺が悲しかったのは勝てなくなったことじゃなくて、勝てなくなった俺を見て苦しむ妹だった。これ以上妹が苦しむのを見かねて、俺は剣道に馴染めないで辞めたがってた兄貴と一緒に剣道を辞め
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