§38 宿命の二人
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の近くに歩いてくれば、死にそうな顔をした甘粕の姿。
「いえいえ、甘粕さん達にそこまでしてもらわなくても。すみません、諸事情で遅れました」
ドニの件は言わなくても良いだろう。剣の王が浜辺に埋まってるなんて言ったところで混乱させるだけだろうし。紅茶を飲んで頭が冷えた黎斗はそう判断する。安かったので道中の自販機で紅茶を購入したのだが、どうやらお腹に物を入れたことで冷静になったらしい。水っ腹でも膨れるものは膨れるのだ。さっきまではきっと、空腹で怒りっぽくなっていたのだろう。昨夜から何も食べてないし。
「いえいえ。飛行機が消滅してしまい一時期混乱になったのですが、ご無事で何よりです」
消滅までは伝わっているようだ。まぁここまでは当然か。どの組織だって自分の手配した飛行機が突如消失すれば気付くだろう。
「その件で色々お伺いしたいのは山々なんですが、そんな件が吹き飛ぶような案件でして」
喋りながら歩いている内に目的地に着いたらしい。被害の比較的少ないエリアのファミレスだ。
「お会いしてほしい方がいます」
いつになく、硬い声。果たしてどうしたのだろうか。まぁ飛行機爆散より格段に上の案件、という時点でめんどくさそうなことは想像がつく。
「一応聞きますけどこれから会う人って僕の知り合いですか?」
内心それはないだろう、と思いつつ聞いてみる。大方どこぞの魔術結社がこの混乱に乗じて黎斗に取り入ろうとする算段、と予想する。正史編纂委員会のエージェントをパシリに使うあたり機関同士の力関係が見て取れる。
(やれやれ。想像以上にくだらないことになりそうだ)
鬱屈とした空気が肺から出ていくのがわかる。気が滅入る。これから営業スマイルで勧誘を断らねばならないのだから。平穏に暮らしていくために敵は極力作りたくない。みんなで仲良く出来れば良いのだけれど。人類皆兄弟とか最高のスローガンではないか。
「はい。少なくとも先方はそう仰っておられます」
「……は?」
ちょっと待て。なんだそれは。黎斗の知り合いなど存在する筈が無い。クラスメートか? それとも家族か? どちらにしろ彼らが甘粕を仲介者に仕立て上げる筈が無い。携帯電話で一発だ。メールやら電話が使えなければ別だろうが。
(ドニのよくわからん結界内ならば確かにケータイは使えない。だけど、あの時に連絡が通じないからって甘粕さん達に接触するか?)
否、甘粕達に接触できる筈が無い。浮かんだ思考を即消して、店前ながら黎斗は携帯電話を確認する。メールは来ていない。念のため、メールを問い合わせる。結果、新着メール無し。つまり連絡先を教えていない知り合いとなる。
(スサノオ達ならこんなまどろっこしいことしないで念話で済ませる筈。みっ
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