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魔王の友を持つ魔王
§38 宿命の二人
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末に向けて動き出す。大地に埋められるのはいい薬だ。少しは頭を冷やすが良い、などと主君に向ける敬意もへったくれも無く、アンドレアの通常営業が今日も始まる。





 後始末を押し付けた黎斗はひたすら帰路を急ごうとした、のだが。

「……か、帰りたくねぇ。絶望がこの時点でわかるってどうなの」

 見えた。見てしまった。一際高く跳躍した時に視界の片隅に入れてしまった。もう絶望しか感じない。

「……何をどうしたら、護堂様の実家以外が更地になるんですかね」

 建造物がほぼ皆無の場所を見つけてしまった。そしてそこは、黎斗のアパートがある場所で。その近辺はここが日本だとは思えない。乱発するクレーター。深く抉れた大地。そこかしこに飛び散らかる何かの残骸。

「つーかさ。なんで護堂の家だけホント無事なん? ……って無事じゃねぇわアレ。一階が消滅しとる」

「……はい?」

 黎斗に言われてエルはもう一度目を凝らすも、違和感があるだけで別に目立った破壊は無い。確かに屋根がところどころ剥がれているがその程度だ。

「だから一階が無い。一階の代わりに二階が地面に隣接してる。一階何処行ったし」

「……なんて器用な」

 全くだ。何処をどうしたら家の一階部分だけを達磨落としのように吹き飛ばせるのだろうか?

「これ明らかに厄介事巻き込まれるパターンですよねぇ!?」

「諦めるしかないんじゃないかと……マスター元気だして?」

 慰めるように尻尾で頭を撫でてくるエル。そんな彼女の仕草に黎斗は無理矢理己を奮起させる。

「……そうだよね! たかが家を失ったぐらいだし、まだ厄介事になるって決まった訳じゃないし!! ……家?」

 はて、家には何があっただろう。

「…………」

 ラノベが、CDが、マンガが、ゲームが、カードが。この世界から、消失した。

「あ、ああぁ……」

「ま、ますたぁ?」

 恐怖に慄く黎斗を見て、エルは純粋に己の主の心配をする。何らかの精神攻撃でも受けているのだろうか。黎斗に精神攻撃など無効な筈なのだけれど。

「僕のパソコンんんんー!!」

「ぎゃふっ!」

 黎斗の絶叫が響き渡り、頭上のエルの獣耳に多大な被害を与える。頭上から転げ落ちなかったのは、一重にに彼女の頭上滞在技術が優れていただけだ。

「誰だよ全く!! 謝罪と賠償を」

「わひゃっ!! マスター少し落ち着いて!」

 先程までの重い足取りとはうってかわり、黎斗の歩く速度は大幅に上昇している。護堂(げんきょう)達に文句の一つでも言ってやらないと気が済まない。





「お待ちしていましたよ、黎斗さん。すみません、お出迎えにお伺いすればよかったんですが」

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