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101番目の舶ィ語
第十三話。魔女の誘惑
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たのにね。きっと瑞江ちゃんも……そこが悔しいんじゃないかな」

「あいつが?」

「ふふっ、きっと、ね」

いつも無表情で毒付いている一之江。
だが、そんな彼女がラインから俺を庇ったのを思い出し。
胸がぎゅううう、と苦しくなった。

「バカだな、君も彼女も」

だから俺はそんなキリカの手を握り返して言ってやった。

「あんなおっかない目に遭いまくって……呪いの人形に追いかけられたり、蟲に食べられそうになったり、村人に殺されかけたり、神隠しで消えそうになったりしたのに。それでも、俺は俺のままだろ?」

口にしてみると、相変わらず俺は濃い日常を送っているなー。
普通の人が体験できない日々を過ごしてるその事実を渋々受けいれようと溜息を吐くと。

「あ……ふふ、そうだね」

俺と過ごした日常を思い出したのかキリカが笑った。

「そうだろ? それで今さら、どう変わるって言うんだ。それに……そうだなあ。仮に俺が強くなったとして『ヒャッハー』とか言って暴れたとしてもさ」

キリカのその細くて熱い指を握りながら、爪を撫でつつ。

「それこそそんな怖い目に遭わせた四人が『調子に乗るな』って嗜めてくれるに違いないからな。それに俺が俺じゃなくなってもみんななら俺を取り戻そうとするだろ?
なんたって俺の仲間たちはさ……」

「そうだね。みんな一級品の都市伝説だもんね」

「そう。だから、約束するよ。今後何があったって俺は変わらない。いつも通り、ネグラで、バカで時たま女の子を口説いたりするかもしれないけど、だけど何があっても俺は……俺達は俺の物語たちを大事にするさ」

「ふふっ……はぁ……」

俺の言葉が伝わったのか、キリカは安心したように溜息を吐いた。
キリカが吐いた溜息が肩にかかって、その熱さを感じる。

「ごめんなキリカ、無理させて。おかげでなんとかやっていけそうな気になったよ」

「なんとかやっていく為の相談だったの?」

俺をキリカは熱っぽい視線で見上げてくる。
その目は見えていないはずなのに、真っ直ぐ俺の目を捉えていた。

「ってきり、モンジ君は……『蒼の邪眼(ブルーアイズ)』や『境山のターボロリババ』。
……それに、『夜霞の首なしライダー(デュラサード)』の倒し方を聞きに来たんだと思っていたのに。モンジ君自身をさらに強くする方法とか」

「キリカ?」

それはどういう意味だ、と聞こうとしたところで。

「出来るよ。さっきから言ってるでしょ? 強くなったとして、君が変わっちゃうのが怖いだけ、って」

キリカは真っ直ぐに俺を見つめて、そう告げた。

「そして、君は変わらないでいてくれるって約束してくれだ。だったら……君がちゃんと百物語の『主人公』になる
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