第二十四夜「白昼夢」
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止した。ただ…見ているだけ…。
何度彼女が飛び降りるのを見ただろう…彼は不意にあることを思い出した。
「繰返し…。」
そう…自殺者の魂は浮かばれず、自殺を再現し続けると言う話…。
「いや…まさか…。」
だが、これこそがその光景ではないのか…そう思いつつ彼がダムを凝視していた時。
「気付いた?」
不意に耳元でそう囁かれた様な気がし、彼は驚いて振り返った。
しかし…そこには誰もいず、もはや彼女の姿を見ることもなかった。
彼はホッと胸を撫で下ろした。今まで余りのことに暑ささえ忘れていた。
たが、そんな彼は、またあることに気付いた。
「暑く…ない…?」
そう呟いた刹那…彼の視界は歪み、その意識さえ緩やかに掻き消えた…。
気付けば、そこは何処かの部屋だった。彼は窓が開いていたため、何気無く入ってしまったのだ。そして何気無く、花瓶に生けてあった花に止まって休んでいたのだ。
彼は何だか長い夢を見ていた気がしたが、それがどんなものであったか思い出せなかった。
ふと見ると、そこへノートがある。
たった一行、こう書いてあった。
- 私は何を…? -
彼にはそれが理解出来なかった。だが、そこへ一緒にあるものは理解した。
そこには、もう土気色になった人の亡骸があったのだ。手には薬瓶らしきものが見え、自殺であろうと思った。
彼はどうと言うことはなく、背にある羽を動かしてそこから出ていった。
出ていく時…ふと、彼は思った。
- あぁ…彼ではなくて良かった…。 -
と。
…end
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