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ソードアート・オンラインー死神の鎮魂歌
瑠璃色の死神ー前編
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から付いていくことしか出来なかった。というよりも腕を引っ張られ強制的に連行されている。

 そんなこんなで71層にたどり着いた。

 今までいたカルデラの街とは打って変わり、紅葉が一面に広がる自然豊かな階層だ。今は秋だから紅葉なのは当たり前だが、NPCの話によれば年中紅葉となっているらしい。その話だけを聞くなら「綺麗な街だなぁ」程度の感想が出るだけだが、良く良く考えるとこの階層だけ季節が秋しか存在しないというのは少々奇妙である。

 だからといって俺たち攻略組が何かするわけでもない。そもそもそういう設定だと思うだけで、特に気にも止めない人が殆どな気がする。

 俺も最初こそ感動したものの何回か来るうちに特に気にも止めなくなってしまった。現に今もそれといった感想は抱けない。

 しかし、彼女は違った様だ。

「綺麗……」

 ラピスはこの景色を見たとたんそう呟いた。

 あまりにも自然と溢れたその言葉は本心からそう思っている事を伺わせる。おそらく初めてこの景色を目にしたのだろう。俺も最初はこんな感じだったような気がする。

 でもね、ラピスさん。貴女攻略組ですよ?ここ現在攻略中の階層なんですよ?ここに初めて来るっていうのはおかしくないですかね?

 辺りを見渡して感動しているラピス。そんな様子を見てため息を溢す俺。更にそんな俺たちの様子をはしばみ色の瞳が少々苛立たしげにこちらを見ていた。

「何の用なの?」

 ブラウンの長髪をしたその少女は腕を組み不機嫌さを露にして尋ねてきた。

 そんな思いをするのも無理はない。本来迷宮を攻略していなければならない俺たちが転移門から現れればそんな顔にもなるだろう。

「いや、その。ごめんなさい」

 ここは謝るべきだと判断し俺は即効頭を下げる。

 その様子を見た少女は深々とため息を吐いた。

「今度からは気をつけてよね」

 そう言ってフッと破顔する。俺はその顔を見て内心で胸を撫で下ろした。

「アスナ」それが彼女の名前であることはこの世界では誰もが知る程の物だ。他にも血盟騎士団副団長、だとか閃光だとかと呼ばれているらしい。団の制服である、白を基調とした衣装に身を包み腰にはレイピアを携えている。凛々しい雰囲気の何処かに幼さも併せ持つ彼女は充分に美少女と呼べる容姿をしていた。

「それで、何の用なの?」

 さっきと同じ台詞なのに今度の声は穏やかに感じられた。これならこちらも気兼ね無く発言することができる。

「お宅の団長殿にお会いしたいんだけど許可とってくれない?」

「それまぁいいんだけど。用ってそれだけ?それだけの為にわざわざ呼びつけたの?」

 言われてみれば確かにそうだ。この程度の事を聞くならメッセージで十分事足りる。
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