精神の奥底
51 Dark Side Of The City 〜中編〜
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もつかないであろう、人を殺すという感覚を彩斗は知ってしまった。
確かに殺してやりたい程に憎い連中だったし、死んで当然だと思っている。
「お前の言うことも理解はできる。僕も復讐心から力に手を出し、人殺しの感覚を知った」
「…どうだった?」
「恐怖に怯える獲物を甚振るように、だが容赦は無く。今までの自分の行いを後悔しながら、マヌケな声を上げて死んでいく様子に達成感を覚えて…次の瞬間には全身の血が凍りついていく感覚がこみ上げてくる」
「後悔してるの?」
「してない。でも…それがどんなに憎くて殺してやりたくて、死んで当然だと思うような相手であっても、その事実自体が後戻りをできなくさせてしまうんだ」
少年は目の前の冷血のはずの人殺しは、誰よりも温かい血が通い、自分の苦悩がちっぽけに思えてしまう程に悩み、苦しんでいることを悟った。
スターダストは少年の未来のほぼ体現に近い。
しかし少年には未来があり、彩斗には無く、後戻りもできない。
だからこそ、自分の未来が無いのなら、自分と同じ苦しみを背負う誰かの未来をと、踏み切ることができた。
「ここで踏み止まることができなければ、僕と同じ苦痛を味わう。もうすぐ朽ち果てる僕と違って未来のあるお前がわざわざ未来を捨てる必要なんて無い。早くカードを捨てるんだ!」
「でも…」
「いいか!?カードを使えば、間違いなくお前は道を踏み外す!自分は力に溺れない、正しく使えると思ってるかもしれない!だがそのカードは力の代償に人間性を壊すんだ!」
「……」
「実際にカードを使って、そこで這いつくばってる連中が今の戦いで僕を殴ることに痛みを覚えていたと思うか!?人を傷つける痛みすらも忘れさせてしまうんだぞ…!」
「ッ…!?」
「まだ分からないか!?人を傷つける、暴力を奮うことの痛みと辛さを忘れてしまったら、お前を傷つけてきた連中と同じだ!今からお前が復讐しようとしている連中と何も変わらないんだ!」
彩斗としての怒号に少年は我に返ったように怯え始めた。
今まで自分が抱いてきた憎しみで可能性ある未来を全て捨てようとしていたことに気づいたのだ。
しかし同時に浮かんできたどうしようもない不安が口から漏れた。
「オレ…今からでもやり直せるかな…?」
「あの病室が見えるか?」
スターダストは3階の病室を指差した。
七海は慌てて身を隠す。
「あの病室の患者は一度、今のお前と同じようにクラスメイトから暴行を受けて入院したことがある。瀕死の重体で手術は難航したらしい。足に至っては両足が骨折、筋肉に損傷があったらしい。だが彼女は生き抜き、必死のリハビリで僅か1年で歩けるようになった」
「……」
「しかし彼女は自分を暴行した相手が憎かったはずなのに、法の裁きに全てを委ねて、自分は少しでもい
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