精神の奥底
51 Dark Side Of The City 〜中編〜
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「……」
三崎七海は夜のデンサンシティを歩いていた。
寝ても覚めても気持ちがまるで安らぐことはないのだ。
もとからこんな時間に街を彷徨く悪癖があったわけではない。
しかも親からは数日前の殺人事件の犯人が捕まっていない現状から不用意に出歩くなと口が酸っぱくなる程に言われている。
しかし、ついこんな時間に眠る両親に気づかれないように家から出てしまうのだった。
「…何してるんだろう、私」
身体は嫌でも休養を必要とし、最終的には眠りに落ちる。
だが身体がある程度、休まると悪夢で目を覚ます。
それを繰り返し続けて、もう1週間以上が経つ。
全ては高垣ミヤが自分のせいで命を落としかけたあの日から始まった。
不良たちに脅されて、彼女を騙して呼び出してしまった。
自分の身を守るために友達を売ったのだ。
もし立場が逆ならば、ミヤは絶対に自分を売ったりはしかっただろう。
あの日から自分を攻め続け、精神をすり減らし続けた結果、何も手に付かない。
趣味の読書もまるで内容が頭に入ってこず、裁縫も針に糸が通せず、何を食べても味を覚えていられない。
トドメが食事を終える度にトイレに直行して全て吐き出してしまう始末だ。
身体の疲れはともかく精神面での疲労に追い込まれ、正直なところ、意識は朦朧としている。
ここ2日間に関しては夢なのか現実なのかの区別すらつかない。
「オイ!!テメェ!どこ見て歩いてんだよ!?」
「……」
「オイ…待てよ!」
「……」
「チッ」
舌、鼻、耳にピアスを空け、未成年のような容姿でありながら酒の匂いを纏った不良とすれ違いざまにぶつかった。
しかし周囲の人間がキレる不良の剣幕に驚いているというのに、七海の耳には入ってすらいない。
何事も無かったかのように歩き続け、その生気の抜けたような気味の悪い雰囲気に不良も諦めて去っていく。
「…全部夢だったら良かったのに」
そんなことを呟く七海の意識は夢に傾いていた。
現に先程、デンサンタワーから光が次々と街中に飛び散っているのを目撃した。
そして更にはそのうちの一発が自分の目の前に降ってきて、そこにいた黒服のセールスマンのような風貌の男と脂臭い浮浪者の老人を弾き飛ばした。
こんなことが現実で起きるはずがない。
仮に現実でも夢と思い込んだ方が、楽になれる気がした。
フラフラとしたまま、足を進める。
ふと顔を上げると、24時間最新の情報を発信し続ける街頭の巨大モニターに晴れのち雨という今日の天気が映る。
臨海地区の自宅マンションから海沿いの道を放浪し、ビーチストリートを経由してデンサン中央病院までの決して近くはないが、電車を使わずとも徒歩で行こうと思えば行ける距離だ。
臨海地区はいわゆ
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