巻ノ十八 伊勢その五
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「決まるというのか」
「はい、ここから北で大きな戦があり」
「そしてか」
「その戦で、です」
「天下は決まるか」
「おおよそ」
「ここから北となるとやはり羽柴殿と柴田殿じゃな」
幸村はすぐにだ、そこまで察して述べた。
「お二方の一戦で決まるか」
「そうなりますか」
「ではやはり羽柴殿じゃな」
「あの方ですか」
「柴田殿は確かにお強いが」
幸村は由利に述べた、柴田勝家は織田家きっての攻め上手でありその強さは天下でも知られている。それで幸村もこう言うのだ。
「だが兵の数が違う」
「羽柴殿とは」
「羽柴殿は織田家の領地のかなりの部分を収められ」
そこから多くの兵を出せるというのだ。
「人も揃っておる様だしな」
「では、ですか」
「羽柴殿が勝たれる」
「そして天下は」
「羽柴殿のものとなるな」
そうなるというのだ。
「それで定まる、しかしな」
「それでもですか」
「それですぐに誰もが従う訳ではない」
その秀吉にというのだ。
「だからな」
「まだ戦は続きますか」
「本能寺の前より幾分か戻っておる」
そうなっているというのだ。
「織田殿はあと数年で天下を統一出来たが」
「九州やみちのくまで」
「それが出来たが。しかし」
「それでもですか」
「羽柴殿が天下を統一されるまで八年か」
「それだけかかりますか」
「そうなるであろうな」
こう話すのだった。
「決まるにしてもな」
「その戦から」
「その間真田家がどうして生き残るかを考えねばな」
「そういうことになりますか」
「そうじゃ、しかし佐助のそれはな」
生きもの達と話せるそのことはというのだ。
「役に立つな」
「犬や猫、牛との言葉もわかりますぞ」
「有り難い、ではな」
「はい、何かあれば」
「色々と教えてくれ」
「さすれば」
猿飛は笑って幸村に応えた、一行はこうしたことも話しながらそのうえで社の中をさらに歩き見て周り参拝した。それが終わり。
社の前の町に出てだ、食に入った。そこで食べるものは。
墨の中にあるうどんだった、少なくとも一行にはそう見えた、これには幸村も表情こそ崩していないが目を瞠って言った。
「書く墨ではないな」
「烏賊か蛸の墨では」
「そうしたものでは」
穴山と海野は完全に驚いて言っていた。
「それをうどんのつゆにするとは」
「そうは考えられぬこと」
「これは凄いですな」
「果たしてどんな味なのか」
「いえ、これはです」
伊佐がここで驚く一行に言った。
「墨ではありません」
「そうなのか」
「はい、これは伊勢うどんといいまして」
こう話すのだった。
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