巻ノ十八 伊勢その一
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巻ノ十八 伊勢
幸村達は室生寺にも寄った、そこも尼僧が多かったがその尼僧達を見てだった。清海は目を細めさせて言った。
「いや、実にのう」
「御主まさか」
猿飛がその清海に眉を顰めさせて問うた。
「尼達を見てか」
「いやいや、変な気は起こしておらんぞ」
「顔に出ておるぞ」
そのにやけた顔を見ての言葉である。
「全く、色好みもいいところじゃな」
「だからそこまでは思っておらぬ」
「ただ見ておるだけか」
「うむ、やはりよいな」
女はというのだ。
「わしはおのこよりもおなごじゃ」
「まあ見るだけならよいが」
それだけならとだ、また言った猿飛だった。
「それならな」
「うむ、それでは見ておるからな」
「あまり見過ぎると嫌われるからな」
「わかっておる。程々にしておくわ」
「まあわしもな」
猿飛自身もこう言う。
「別におなごは嫌いではないし」
「御主もじゃな」
「尼さん達を見るのも好きじゃ」
「ほれ、わしと同じではないか」
「しかし御主の様にあからさまではない」
如何にもという目で見てにやけたりはしないというのだ。
「とてもな」
「そう言うか」
「そもそも坊主でどうしてそこまで好色なのじゃ」
「しかし乱暴はせぬぞ」
「それは絶対にじゃな」
「わしの力はあくまで戦の為、悪い奴を懲らしめる為のものでじゃ」
「乱暴の為ではないか」
「女子供や年寄りに振るったことはない」
それこそ一度もというのだ。
「そんなことはせぬからな」
「まあそれは確かじゃな」
「そうじゃろ、わしは乱暴はせぬわ」
「そこは御主のいいところじゃ」
「自分でもそう思っておる」
「それでじゃが」
ここでだ、また言った猿飛だった。今度彼が言うことはというと、
「その尼さん達が見ておるのはな」
「わしじゃな」
「いや、御主ではないぞ」
猿飛は清海の誇らしげな言葉にすぐに笑って返した。
「まずは才蔵じゃ」
「むっ、そういえば」
見ればその通りだった、尼達は一行の中でとりわけ整った顔立ちの霧隠を見ていた。それも頬を赤らめさせて。
そしてだ、その彼の他にもだ。
「甚八もよく見られておるの」
「甚八もこれで苦味ばしったよい男じゃからな」
それで尼達も見るというのだ。
「それに小助もな」
「確かに小助も顔がよいな」
清海は穴山の顔もまじまじと見つつ猿飛に言った。
「何処か格好がよくてな」
「そうじゃ、それでわしじゃが」
「御主はあまり見られておらぬぞ」
彼についてはだった。
「わしと同じ位であろう」
「何っ、わしはか」
「そうじゃ、見れば御主も結構目がにやけておるぞ」
尼達を見てだ。
「それではな」
「御主に言われ
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