深く染まるモノは黒と違い
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の方が厄介だ。
何より愛紗や鈴々は南蛮に対する不信感や不安を拭うという名目を信じきっているが……星は信じていない。
桃香も、白蓮も、愛紗も、鈴々も人をあまり疑わない。愛紗は確かに厳しく物事を剪定するが、一度能力と心持ちを信じた以上は必要以上に疑うことはしないのだ。不器用さ故に、面と向かって話されない限り彼女が誰かを咎めることは無く、人としての間違いを指摘することも無い。
それはきっと正しいことで、人として美しいこと。他者を信じる心は力となり、個人にしても群体にしても強くさせる。
ただし……もし、万が一誰かが間違った時に、誰もが皆を信じていればその間違いを指摘できるモノはいない。
昔の劉備軍で誰かの思惑を看破して咎める役目を担えたのは、彼だけ。
幽州で牡丹と共にその役目を担ってきた星が入ったのは幸運と言っていいかもしれない。
――南蛮との交渉は最終的に戦に発展すると朱里も藍々も予測していたはず。ならば、これは他国への力の誇示、そして……曹操軍との全面対決に対する準備に過ぎない。
思考の末に掴んだ答えは軍行動としては当然のモノ。軍師として利を求めたいい手であろう。
――胸に澱みのようなモノが湧いてしまうのは……矛盾の対価。これが彼を苦しめていた要因に違いない。
視点を変えれば、所詮は自分達の都合を押し付けた“話し合い”であることに変わりないのだ。
――“綺麗に飾り付けされた話し合いの理由”に“昏々着々と積み上げられる利の為の言い訳”。
考えながら、まるで桃香と秋斗の二人を表しているようだと納得する。
理想に同調しながら進み方も考え方も違うこの二人。その行いを理解していながら在り方が対極のまま。
なるほどな、と一人ごちた。
どちらかと言えば星は秋斗よりらしい。いや、昔から分かっていた事だ。
屁理屈と言い訳を捏ねてするりするりと躱して行けば、そんな役割にしか辿り着けない。
正義を語りながらも頭は冷めていて、理不尽に憤慨しても何処かで是非も無しと判断してしまうのだ。
違う点は多々あるが、似通っている部分はやはり多い。
だからこそ星は現在、澱みのような不快感が心に溜まって行く。
頭を振りつつも拒絶はしない。彼が此れを耐えられたのなら、自分にも耐えられるはずだから。
少しだけでもその一端を理解したかった。彼が苦しんだ理由を知って、やっと隣に立てるのだ。
――南蛮との和睦は曹操軍と戦う為の兵力増強が主目的。さて……理不尽を押し付けた我らと果たして彼女達は共に戦ってくれるかどうか。
血だまりの中で震える少女達と、見るも無残に死に絶えた幼子達を交互に見やった。
家族だと言っていたモノ達を殺され、自分達の目的の為に肩を並べろと……己らはどの口で
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