深く染まるモノは黒と違い
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いた。
「追えば私がお前達を殺す。狩りをするのだから分かるだろうに……狩られる側は背中を見せるから殺される、とな」
細めた目がギラリと輝き、一歩、二歩と少女達は後ずさった。
別段、まだ星は本気を出しても居ない。とるに足らない相手に対して本気を出すまでも無い。自分の部隊の被害を抑える為に戦っていただけ。同等レベルの将が居ない以上、多くを殺そうと思えばいつでも出来たのだから。
「だからもう動くな、戦うな。これ以上続けても意味が無い。私達は刃を振るわない相手に攻撃するほど堕ちてはおらん。安心するがいい。私の仲間は南蛮王を殺しはせんさ」
「う……」
無駄な殺生をしないことも将の務めだ。
殺し尽くしてばかりの戦争をしていては人が生きる世界は壊れてしまう。
呆れた、とばかりのため息を吐いた星が槍を降ろす。
三種類の同じ顔ばかりが並んでいるから気付かなかったが、どうやらまとめ役になり得るモノが居るらしい。
――後少しだ。部隊を纏めるモノが居るなら容易い。存外呆気ないモノだ。
ケモノであっても狩りをするならリーダー格の存在はいる。主格が折れれば下の者達は統率を失うのは通常の戦でも同じこと。
「……嘘にゃ」
「そう思うならご自由に。抗えば抗う程にお前の家族は死んでいくが?」
「やめるにゃぁ!」
性質の悪い脅しだと自分で苦笑するも、星は悪役さながらに頬を吊り上げた。
「脅すなんて卑怯にゃ! この卑怯者!」
「くく、よく言う。初めから我らは戦おうとしていなかっただろうに。
なら我らは不意打ちを受けた時点で問答無用に戦えばよかったのかな?」
「ひっ……」
ちゃきりと向けた槍の先を見つめて少女は怯えた。
目の前で見た星の武は間違いなく彼女達の王と同じかそれ以上。自分では太刀打ちできない相手は恐ろしい。
南蛮で生きてきた少女は……強者に逆らうことなど出来ようはずも無かった。
小さく、どうにか聞き取れる声で独り言を零しながら、少女はその場にへたり込む。
「……トラ達は悪くない……悪くないのに……にゃんで……勝手に縄張りに入るのが悪いのに……」
――相互の認識が無ければ侵略と変わらん、か。使者を送るというこちらの遣り方が通じなかった以上、もう少し深い行動をすべきだった。
敵少女の言葉は真っ直ぐに自分達のしていることを言い当てる。誤魔化しも利かない他者から見た正統な姿。
なんとも言えない空しさが湧いた。
劉備軍としては南蛮は侵略者だと思っていたが、彼女達からすれば旧くから続く敵対者である自分達の方が侵略者。
――益州の被害が真実かどうかも分からなくなった。まあ、そちらは益州古来のモノに聞くしかない。しかし……朱里と藍々が我らに“話していない腹の内”
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