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乱世の確率事象改変
深く染まるモノは黒と違い
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ばどれだけの命を奪おうが構わないと既に心を決めている。
 彼女は決して綺麗な心を持っていないし、綺麗事を吐きたくもなかった。

 罪深く度し難い。
 それでも欲しいモノがある。
 最優先順位が彼と白蓮になってしまった彼女にとって、正義だ悪だは二の次三の次。

――手段を択ばないわけでは無いが、まるであいつと同類だな。

 少女を切り結びながら彼女は尚も思考に潜る。
 幽州を踏み荒らした大敵の内の一人、紅の髪を持った乙女を思い出す。
 いっそあの女くらいに堕ちてしまえれば楽なのかもしれない。今のままでは自分は中途半端で矛盾だらけだ。
 しかしやはり、堕ちようとは思わなかった。

 超えない線は一つだけ。
 彼女はあくまで将であり、白蓮に仕える臣だということ。見失うわけには行かない。外道に向かうくらいなら死んだ方がマシだった。

 分かっている。気付いている。少女達が恐怖しているなら、恐怖で縛ってしまえばこの戦は終わるだろう。
 残虐の限りを尽くせば敵は怖気づき、味方の兵士も多く助かるに違いない。それでも、それは白蓮と星、そして幽州の戦い方では無い。如何に多くを救えようと、それだけは譲ってはならない線引きだった。
 それともう一つ、彼女はまだ戦を判断する頭を持っている。白蓮と戦ってきたと胸を張って言いたいのなら……“こんな無意味な争いを長々と続けている方が趙子龍としては間違いだ”。

 ふっと一息、視線を巡らせば共に戦ってきた趙雲隊がいる。
 あの紅揚羽の狂兵達に比べれば、少女兵士と戦うことはもう既に通常の戦争と変わらない。
 余裕の出てきた兵士達は星の指示を待っていた。どうするのか、と目線だけで問いかけられ……星は不敵に笑う。

「くくっ、そうさ、我らは堕ちてはならん。此れはあくまで戦だ。趙雲隊の半数は愛紗の援護に向かえ。早々に終わらせるぞ」

 近くの兵士に指示を伝え、彼女はまた少女達に向き直った。
 同時に、後ろの方の兵士から関羽隊との合流の為と行動を開始した。
 するり、槍を構えた姿はいつもの如く蝶のように。頬に付いた血を舐めとった彼女は妖艶に笑う。

「ほら、数を減らしてやったぞ? これでお前達でも戦い易くなったのではないかな?
 まあ、離脱した兵士には南蛮王を捕えて来て貰うが」

 う……とたじろいだ少女達。どうすればいいのか判断を下すことも出来ず。短髪で黒髪の元気そうな少女がギシリと歯を噛み鳴らした。

「み、みんなっ! 逃げた奴等を追うにゃ――――」
「行かせんよ」

 静かな、それでいて良く通る声が優しく響く。反して煌く白刃の冷たさが際立っていた。
 なんでもない日常を過ごすのと変わらない彼女の声は、人に悪戯をする時と同じ音を放ちながらも、有無を言わさぬ圧力を持って
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