深く染まるモノは黒と違い
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の突撃である。兵士達と同程度の力を以って、少女達は純粋無垢な様相で並み居る大人達を殺していく。
たった数瞬の出来事で自分達の愚かさを理解する。敵は確かに少女だ。しかし自分達が人間である以上、刃を受ければ死ぬのだ。
理解しても頭が追いつかない。追いつくはずが無い。人はそれほど直ぐに切り替えられるように出来ていない。その一瞬の間が……戦場では命取りだというのに……。
悲鳴と断末魔。恐慌による情けない大人の男の声はまるで狩られる羊か豚か。一声一声が人の生きた証のはずなのに、なんと情けないことであろうか。
「狼狽えるなっ!」
怒声一閃。煌く声が森全てに響くかの如く張り上がった。
狼狽した兵士達に向けて放ったのは……愛紗だった。突撃して来る少女を叩き伏せながら彼女は舞い踊るその最中、味方全てに聴こえるように声を流した。
「その声は死ぬのが怖ろしいから出ているのか! それとも何も守れない悔しさから出ているのか! 誰が敵であろうとも……お前達は戦うことを選んだのだろうが!」
まるで自分に言い聞かせるような言の葉。苦い味を切り取ったような声が痛々しい……が、愛紗の、そして鈴々と星の隊はそれだけで心に平静を取り戻した。
それ以外の兵士は衝撃を受けつつも意味を心に溶け込ませていく。
「貴様らの目の前に居る敵をよく見てみろ! 貴様らがいつか戦わなければならない相手は誰だ! それらと比べて目の前の敵は恐ろしいか! 貴様らは……そんな体たらくで私と共に“黒麒麟”の目の前に立つつもりだったのか!」
悲鳴にも聞こえる。泣いている少女の声かとも思えた。叱咤しているはずなのに、自問の刃はきっと彼女自身に向いている。
兵士達の目に光が戻った。そうしてじっくりと刃を向けてくる敵を見定める。余裕のもったモノから次々と。
まず力が足りない……厳しい訓練で鍛え上げた自分達と同等だとしても、あの化け物よりも劣っている。
次に速さが足りない……小さな体躯は確かにすばしっこいが、あの化け物は確実に命を奪い取ってくる異質な“速さ”があった。
最後に連携が足りない……見事というしかない森での連携行動であるにも関わらず、傷だらけの化け物が命を捨てて殺しに来る連携に比べれば児戯に等しい。
ああ、なんだ。あれらと比べれば大したことは無い。
厳しい訓練の末に精鋭となった自分達を遥かに超える……狂信者の群れの部隊に比べれば。
きっと今の自分達が戦えば一合で死ぬ。
将同士の戦いは軍神の働きによってまだ持つとしても、兵士同士の戦いは間違いなく負ける。
頭で考えずとも分かる。それらと戦う為には命を賭けずしては戦えない。死中に活を見出すなんて生易しい戦ではなくて、全滅してでも止める覚悟を持たねば“アレ”は止まらない。それ
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