騎士の章
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城での晩餐は、とても静かであった。
皆は王に対し、右側にアルフレート他四人、その四人の正面にはガウトリッツが座っていた。王妃の席は空席となっており、幽閉が事実だということを物語っている。
さて、マルスとクレンがガウトリッツに対面するのは初めてであったが、その品の無さには呆れ果てるばかりであった。
ガウトリッツとは謁見のための大広間で初めて会ったのだが、彼らが入るやいきなり「王城に招かれたのだ、光栄に思うが良い。」と、平然と言い放ったのである。
その言い草は大変不快なもので、彼に付き従っていた者達は薄笑いさえ浮かべている始末であった。
暫らくは誰も言葉を発することなく食堂は静かであったが、その静寂をガウトリッツが破った。
「父上。そこのマルスとやらは、かなりの剣の使い手だと聞いています。ここで少し、手合せを願いたいのですが。」
かなり酔っている様子である。それを見て、父王はため息を洩らして言った。
「明日にでも頼めば良かろうて。」
しかし、ガウトリッツは王の言葉を無視し、マルスに視線を変えて「相手をしろ。」と言ってきたのである。それを横からクレンが止めに入った。
「ガウトリッツ様。互いにこう酔うては、手元も儘なりませぬ。明日の午後にでも場を改めた方が宜しいかと存じますが。」
「無礼であろうが!この私が遣りたいと申しておるのだ。口出し致すなっ!」
クレンの言葉に、ガウトリッツは真っ赤になって怒鳴った。だが、呂律も怪しげなガウトリッツを前に、どこまでも冷静であった。
「ガウトリッツ様。そうは申されますが、もし万が一、御身に傷でもつきますれば一大事でございます。王子一人のお躰ではございません。」
クレンの冷静沈着な言葉に、王も言葉を付け足した。
「ガウトリッツ、もう止めんか。もう夜も更けてきたゆえ、ここまでとしようぞ。さぁ、お前は寝室に行って休みなさい。アルフレートも皆を寝室へ案内せよ。」
王は皆に下がるよう命じ、その場を解散させた。
ガウトリッツは未だ何か言いたそうではあったが、そのまま何も言わずに出て行ったのであった。
その後、マルスは用意された部屋にて月を眺めていた。窓は大きく、開けておくと心地よい風が入ってくる。
リリーの街を出る前日も、このような美しい月が大地を照らしていたことを思い出していた。
「あいつ、元気にしてんのかな…。」
月明かりの中に、帰ると約束した女性の姿を描いていた時、不意に扉を誰かが叩いた。
「どうぞ。」
マルスがそう声を掛けると、エルンストが中へ入ってきたのであった。
「邪魔したか?」
「いや、月を見ていただけだ。で、何か用なのか?」
問われたエルンストはマルスの近くに歩み寄り、一通の書簡を彼に手渡した。
「これは?」
「アンナ
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