歯車を止めて
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おや、なんだろう？ 神殿内部が慌ただしい。
異教徒の殺人未遂事件に巻き込まれましたーって、取り纏め役の女性枢機卿に報告しようと思ったんだけど……それどころじゃなさそうだ。
「何かありましたか？」
血相変えて廊下を全力疾走する書官の一人を捕まえて尋ねると、彼は顔に「ぎゃあ」と書いて半泣きになりながら答えてくれた。
「さ、さささきほどマリノア王国の大司教候補様から急伝が届きまして！ 教皇猊下にご報告申し上げたところ、会議の再開を早めよとのご命令が下ったのでございます！ とにかく直ぐにでもとの仰せですので、大司教様方もどうぞお早く準備をお願いしますぅ！」
「そう。ありがとう」
一秒も無駄にできない様子の彼を解放すると、一礼だけはしっかり残して脱兎の如く走り去ってしまった。
どんな時でも礼儀を忘れない……優秀な官人だね。
「外で起きた事はまた後で報告しようか。私達も急ごう」
「そうだね」
タグラハン大司教と一緒に首を傾げつつ昨夜と同じ場所に向かってみれば、室内はちょっとした喧騒に包まれていた。
珍しいな。上下関係を無視して言い争うなんて、滅多に無い光景だ。
「だから、私にも何がなんだか……」
「それでは、貴方が国を離れてから突然決定したと仰るのか、バークレル大司教！」
「ありえない！ こんな大事を何の前触れも無く決断するなど！」
「ですが、しかし……」
大司教も枢機卿も室内にバラバラと数人ずつ固まって、主にマリノア王国のバークレル大司教を責める口論。
数人の書官が円卓と枢機卿の席を行ったり来たりしてるから、詳細を書いた書類はまだちゃんと確認してないんじゃない？ なのに彼等は既に報せの内容を知っているらしい。呼び出しを受けた時にでも聞いたのかな。
「静粛に！ 各々方、ご着席願います！」
凛と通る女性枢機卿の声が、ざわめきを一瞬で沈黙に変えた。
進行と取り纏め役を任された彼女の声は、此処では教皇猊下の声と見做される。尚何か言いたげな口元を引き結んで、指定された席へと足を運ぶ一同。隣に立つ友人に目配せして、私達も席に着く。
程なくして現れた教皇猊下もご着席され、会議の再開ギリギリで配り終えられた書類に目を通せと指示が下る。
書官の皆さん、お疲れ様です。
さて、マリノア王国で何が決定されたのか？ 上から下まで一文字も見落とさないよう、じっくり読み進める。
………………んー……。
いろいろ小難しい言葉で遠回しに濁してるなぁ。
要約すると、こうだ。
『女神アリア顕現を巡る騒動が落ち着くまで、宗教筋にはお金以外じゃ一切関わりません。これ、マリノア王室の決定事項ですから。悪しからず』
読み終わった皆さんは焦りを隠さず、再度バークレル大司教に「どういう事か、子細を説明した
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