歯車を止めて
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
……んー、と。いろいろと小難しい言葉で遠回しに濁してるなあ。
要約すると、こうだ。
『女神アリアの顕現を巡る騒動が落ち着くまで、宗教方面にはお金以外じゃ一切関わりません。これ、マリノア王室の決定事項ですから。悪しからず』
読み終わった皆さんは焦りを隠さず、バークレル大司教に
「どういうことなのか、仔細を説明したまえ」と目線で訴えている。
怒号を交わさないのは賢明な判断だね。
落ち着かない態度と顔色からして彼、本当に何も聞いてないっぽいし。
責めても困った顔が返ってくるだけで、状況は変化しないと思うんだ。
マリノア王室は、創国期から代々敬虔なアリア信徒だ。
教会の運営に関わる資金提供も惜しみなく、アリア信仰の危機と聞けば、国王軍をもあっさり動かしてしまうほどの心酔ぶりで有名。
……だったのが、いきなり金銭以外は知らぬ存ぜぬを宣告してきた。
焦りもするよねえ。
これじゃあ、アリア信仰を護ってきた剣の一本がいきなり鞘に収められ、鎖で厳重に封じられたようなもの。
世界各地で異教徒との鬼気迫る睨み合いが始まっている今、自衛目的の微々たる力しか持たないアリア信徒達にとっては、かなり厳しい決定だ。
寄進を続けるなら、信仰心を捨てたってわけじゃないんだろうけど……
マリノアの地方教会が知ったら、ちょっとした混乱になりそう。
「ご覧いただいた通り、マリノア王室の方々は一連の騒動に対して不干渉の姿勢を執るとの判断をなさいました。この件を念頭に置いて議論を進めたいと思います……が、実はつい先ほど、同様の急伝が他にも二本届きました。書類作成が間に合わない為、口頭での報告となります」
マリノアの次に敬虔であると評判のシャフィール王室とベラディ王室も、寄進続行と荒事不干渉を決めた。
バークレル大司教を問い詰める側だったそれぞれの大司教が面食らって、そんなバカなと、陸に上げられた魚みたく口をパクパクさせる。
……ふぅん?
大戦の痛手を残しているとはいえ、それでも信仰を捨てなかった彼らが、まったく同じ内容の方針を、この危うい時期に打ち出したか。
正直、この三国が手を退く事実だけで、議論する意味なんて綺麗さっぱりなくなるんだよね。
主立った剣も盾も失ってしまった以上、答えは一つ。
『何もせず、何をされても不動を貫く』……しかない。
抵抗も反抗も、状況悪化の材料にしかならないし。
各王室の協力を得られないなら、調査隊の活動も制限されてしまう。
「複雑」
「そうだね」
ポソッと呟いた私の言葉を拾って、タグラハン大司教が小さく頷く。
元から傍観していたほうが良いよ派の私達
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ