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英雄になりたい
第一章
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                 英雄になりたい
 サイ=ジョーンズは子供の頃からいつも言っていた。アフリカ系特有の縮れた毛だがその毛は少し赤がかっている丸顔の少年だ。目がきらきらとしている。
「僕はヒーローになりたいんだよ」
「スーパーマンみたいなか?」
「それかバットマンみたいな」
「そんなヒーローになりたいっていうの」
「そうなんだな」
「そうだよ、悪い奴をどんどん倒して」
 そしてというのだ。
「皆を助けられるね」
「漫画や映画に出て来るみたいなヒーローになりたい」108
「そう言うんだ」
「大人になったら」
「そうだよ、僕はそうなりたいんだ」
 まだ小さな身体で全力で言うのだった。
「そんな風にね」
「じゃあまずは強くならないと」
「それでいい人にならないと」
「ヒーローにはなれないよ」
「そうした人にならないと」
 友人達はこう彼に言った。
「さもないとね」
「悪い奴だとヒーローにならないし」
「それにね」
「弱いとね」
「誰も守れないし」
「そこはしっかりしないと」
「ヒーローになれないよ」
 とてもとだ、友人達は彼にこうも言った、そして。
 実際にだ、サイもだ。
 友人達の言葉を聞いて悪いことはしない様にしてマーシャルアーツをはじめて強くなろうとした。そしてそのマーシャルアーツは。
 何年も続けてだ、日頃の行いもだ。
 しっかりとしていた、それで教会の牧師からも言われた。
「そうした心意気ならね」
「いいんですね」
「うん、とてもね」
「僕子供の頃ヒーローになりたかったんです」
「じゃあ今はどうかな」
「同じです」
 子供の頃の夢そのままにというのだ。
「そう思っています」
「ヒーローにだね」
「なりたいです」
「そうか、じゃあ漫画に出て来るみたいな」
「スーパーマンやバットマンみたいな」
 まさにというのだ。
「そんな人になりたいんです」
「変身は無理だよ」
 牧師は笑ってこのことは無理だと話した。
「それはね」
「はい、それはもうわかっています」
「まあこのことは当然だね」
「はい、ですが」
「それでもだね」
「僕はヒーローになりたいんです」
 熱い声でだ、彼は牧師に語った。
「皆を助けられて悪い奴をやっつける」
「お巡りさんみたいな、かな」
「そうです、西部劇のヒーローみたいな」
 ここで騎兵隊と言わなかったのは彼が騎兵隊の映画を観ていないからだ。西部劇においてのもう一つのヒーローの映画は。
「そういう風になりたいです」
「それじゃあ心も身体もね」
「強くてですね」
「正しいものでないとね、ただ」
「ただ?」
「悪い奴をやっつけても」
 それでもとだ、ここで牧師はサイにこう注意した。
「無茶はいけないよ」
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