第二章
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「男前のな」
「さっきの子みたいなか」
「こっから八条高に通ってるってことはや」
考える顔になってだ、千恵美は呟いた。
「地元の子やな」
「ここのな」
「それも今の時間や部活帰りや」
「今日日曜やしな」
「ここの近くやな、お家は」
千恵美は推理していった。
「ご近所さんやないか」
「ってことはやな」
「また会えたらな」
その時はというのだ。
「アタックしよか」
「いきなりかいな」
「女は度胸や、やったろか」
「いや、それよりもや」
特攻しようとする千恵美にだ、亜沙美は言った。
「まずはお家を調べてな」
「そしてかいな」
「名前とかまで調べてや」
「慎重にことを進めるんやな」
「いきなりアタックしてどうするんや」
亜沙美は千恵美にこうも言った。
「それで適うものはないわ」
「何や、彼氏ゲットやな」
「そやから最初から言うてるやろ」
千恵美はむっとした顔で亜沙美に返した。
「敵を知り己を知ればっていうやろ」
「百戦何かやな」
「そや、まずはあの彼のこと調べるで」
「住所氏名電話番号家族構成」
「あらかた調べるで」
「さながらストーカーやな」
亜沙美は意気込む千恵美に突っ込みを入れた。
「ほんまに」
「恋する女や、ほなこれからな」
「調べるんやな」
「いや、その前に腹ごしらえや」
いきなりその彼への下調べにかかるのではなく、というのだ。
「たこ焼き食べよか」
「ああ、まずはか」
「お腹空いたわ、屋台で買おか」
「そやな、うちもたこ焼き食べたなったわ」
亜沙美も言うのだった、千恵美に応えて。
「ほな行こか」
「三時のおやつはたこ焼きや」
「今四時半やで」
「気分はそや」
こうした話をしてだ、千恵美は実際に亜沙美と一緒におやつのたこ焼きを食べた。そうしてからだった。彼が通った先に向かってだった。
住吉の住宅街の中でだ、千恵美は亜沙美に言った。
「ここならうちよお知ってるわ」
「うちもや」
「ここ望ちゃんの家の傍やで」
「そやな、あの娘の」
中学から一緒で同じ高校でもある彼女の、というのだ。
「近くかな」
「ほな学校で望ちゃんに聞こか」
「近所に八条学園通ってる子おるかってな」
「そしてからやな」
こうしてだった、二人は次の日学校でだ。
実際にその少女緑川望にだ、問うたのだった。望は黒髪を短くしている。明るい目でその左目の付け根のところに黒子、所謂泣き黒子がある。その望に問うたのだ。
「あの、望ちゃんええか?」
「何や?」
千恵美が望に尋ねた、彼女の席で。亜沙美は付き添いだ。
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