第一章
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浪速女
美月千恵美の家は大阪の住吉区にある、代々そこに住んでいて高校に入った今でも住んでいる。子供の頃からその住吉や天下茶屋、住之江や萩之茶屋、新今宮といった場所で遊んでいた。
この日は住吉大社の中にいた、そこでラフなジーンズ姿とジャケットといった格好で友人の野中亜沙美にこう言った。
「なあ、亜沙美高校卒業したらどうするんや?」
長い茶色の自分の髪を指でいじりながらの言葉だ。
「そっからは」
「ああ、卒業したらな」
亜沙美は大きな目を瞬かせてから千恵美に答えた、亜沙美も髪の毛を茶色にしている。髪はポニーテールにしている。大きな丸い目でだ。
唇は大きくピンクだ、メイクは濃く服は赤い上着と黒のズボンだ。厚着である。
その大きな目でだ、千恵美のその長い茶色の髪とだ。
切れ長の長い睫毛の目、薄く小さな唇とだ。長身ですらりとしたスタイルまで見てそのうえで彼女に答えた。
「大学行くわ」
「大学かいな」
「そや、うち進学するわ」
こう千恵美に言うのだった。
「そのつもりや」
「そやったらうちと一緒やな」
「何や、千恵美もかいな」
「ああ、うちも大学行こう思てんねん」
千恵美は大社の砂利道を歩きつつ共に歩く亜沙美に話した。
「これからな」
「そうするんやな」
「そのつもりや、ただな」
「ただ?」
「大学行くんやったらやっぱり勉強せんとな」
こう言うのだった、亜沙美に。
「あかんやろ」
「それは当然やな」
亜沙美も千恵美に答えた。
「多少なりとも」
「うち勉強はあまりな」
「千恵美そんなに成績悪くないやん」
「まあな、けれど勉強好きやないねん」
「そう言うても大学行こ思たら勉強せなあかんで」
「それはそやけどな」
受験の為だ、千恵美もそれはわかっている。
しかし勉強は好きでないのでだ、こう言うのだ。
「あまりしたないな」
「けど行きたいんやろ」
「そこで保母さんの資格取りたいな」
「それやったら絶対にや」
勉強はしなくてはならないとだ、亜沙美は千恵美に言うのだった、そうしたことを話していた。二人は高校二年なのでそろそろこうしたことを考えていた。
その時にだ、ふと。
千恵美は前を横切った黒の詰襟の男の子を見て思わずだった。
目を瞬かせてだ、今度はこんなことを言った。
「さっきの子めっちゃ男前やん」
「ああ、さっきの子な」
「そやろ、めっちゃええやん」
「あの子の制服は確か」
亜沙美は彼の制服から言った。
「八条高校の子やな」
「ああ、神戸の」
「こっからあそこに通ってるう子やな」
「遠距離通学やな」
「まあそうなるな」
「ふうん、そうなんか」
千恵美は亜沙美の言葉に頷きながらだった。
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