第三章
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「そうさせてもらっているわ」
「それならいいよ」
「ええ、これがホワイトデーね」
「早いけれどね」
「そうね、じゃあこのままね」
「楽しんでくれるね」
「そうさせてもらうわね」
彼にこう笑顔で答えた、そしてここで。
私は友達と話したことを思い出した、そして。
彼を見るとだ、周りに奇麗な女の人が何人かいるけれどその誰にもだった。目を向けることはしなかった。
それでだ、私はそのことに安心すると共に。
不安も覚えた、まさかと思うけれど私にもとだ。
女の人自体に興味はないのかと思った、けれど。
それは違っていた、そう思った時にとびきりの、何処かの女優さんかと思う程に奇麗な女の人がドレスを着て私達の席の傍を通った、すると。
彼はその人を目で見た、首も少しだけその人の方に動いた。
その目は見惚れていたものだった、それから。
私の方に目と顔を戻してだ、顔全体を無意識のうちに微笑んでそうしてだった。私に優しい声で言ってくれた。
「奇麗な人だったね」
「そうね」
「ああした人もいるんだね」
こう私に言った、けれど。
それで終わってだ、私にこう言ってくれた。
「じゃあこの後は」
「デザートまで食べた後は」
「どうしようかな」
「今度は私がエスコートするわね」
彼にくすりと笑って言った。
「そうするわね」
「じゃあ恵里菜ちゃんが案内してくれるんだ」
「ワインを飲んだけれど」
それでもとだ、彼に言った。
「バーでもね」
「飲むんだね」
「それでどうかしら、ワイン一本なら私が奢るわ」
「いいよ、女の子にお金は出させないよ」
「遠慮しなくていいから、ここのお金は出してくれたし、それに」
「それに?」
「何でもないわ」
今さっきのことはあえて言わないでだ、私は微笑んでそこは誤魔化した。
そしてだ、彼にそのうえでこう言った。
「一本位ならいいでしょ」
「じゃあ」
「少し位ならね」
ワインもそうだけれど浮気もだ、ほんの少しならと彼に言ってそうして二人でバーにも行った。そしてその翌朝私は彼女に言った。
「浮気されたわ」
「あら、彼に」
「ええ、昨日ね」
お昼を会社のすぐ近くの食堂で一緒に食べている時に話した。
「されたわ」
「どんな浮気?」
「ほんのちょっとだけだけれどね」
「別に深いものじゃないのね」
「それ位ならいいかってものだから」
それで、とだ。私はこうも話した。
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