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竜のもうひとつの瞳
第八章〜アニキと私と野郎共の恋の詩〜
第三十八話
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手を掴んで目を潤ませながらそんなことを言えば、ほんのりを顔を赤くして、おう、とだけ言っている。

 ……アニキ、もしかしてあんまり女慣れしてない? ファーストコンタクトの時から思ってたんだけども。
やっぱりこの人、海賊やってるわりに初心なのかしら。
でも、幸村君よりかは免疫ありそうな感じはするけども……。

 「し、しかし、アンタも大変だったな。毛利の奴に捨て駒にされかけた挙句、囚われの身になっちまうってのも」

 「……そうよ、あの毛利が爽やかな笑みで愛とか語りだしたのを想像してみてよ。
マジ怖いから。この世の終わりが来たのかって思っちゃうから」

 「……確かに怖ぇ。あの鉄面皮が奴さんだしなぁ」

 同意される毛利も可哀想だと思うけど、洗脳される前までは表情が崩れたところとかほとんど見たこと無かったし。
寂しい人だとか独りぼっちとか言われてキレたのは流石にビビッたけど。

 「でも、あんなに胡散臭い愛に騙される辺り、実はそういうのが人一倍欲しいのかもね」

 「毛利が? そんなもんかねぇ……」

 「愛などいらぬ! ……とか言っちゃう人ほど、実はそういうのが欲しいんだと思うよー?
私も結構えげつないことやって来てるけどもさ、そういうことやった後ほど人の温かさが恋しくなるし、誰かの支えが欲しくなる時だってあるもん。
言葉で慰めてもらうんじゃなくて、心の拠り所みたいなものがあれば人って案外強くいられるもんでしょ?」

 多分、あの鉄面皮のオクラであってもそこら辺は変わらないんじゃないのかって思うけども。
あの人が一体何を考えてるのかは読めないけどもさ、少なくとも周りの反応見てる限りじゃそういうのは一切無さそうだし。

 「……そう、かもしれねぇなぁ」

 何か思い当たる節でもあったのか、アニキが空を見上げながら何か考えている。

 「いやな、二年くらい前に毛利とぶつかったことがあったんだけどもよ、
あの野郎兵を捨て駒扱いして何とも思わないって顔するもんだから、ついガツンと言っちまったんだけどもよぉ……
そしたら“家のため”とか“安芸の安寧のため”とかでそれ以外はいらねぇって言うからさ、
つい寂しい奴だなって言っちまったんだよな」

 ああ、ザビーと同じようなこと言ったわけね。

 「そしたらもの凄い勢いでキレちまってよ。今思えば、あの野郎も寂しかったのかもしれねぇなぁ……」

 なんて零して考えているアニキは結構いい人だ。富嶽盗まれてるのに。
ま、それは流石に言わなかったけれども。

 「性格だって全然違うし、アイツは何考えてんのか分からねぇけど、何か気になっちまってさ。
酒を飲もうって誘ったり何だりって付き合いはあるんだよなぁ。誘えば都合が悪くなけりゃ来るしよ」


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