第五十四話
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う言って、俺はゆっくりと右手を差し出す。軽くムカデの皮膚に掌を載せる。続いて指に力を込めて押し込む。
ずぶずぶと皮膚を突き破り手がめり込んでいく。
次の刹那、一気に俺は腕を突き入れた。
抵抗なく奴の体内に肘まで入り込む。
少年の腕を掴んだと同時に、力任せに引き抜いた。
「ぎゃいやあああ!!! 」
もの凄い悲鳴が聞こえた。それは少年のものか、それともそれ以外のものか、全員の者かは分からない。
ただ、体液の中に入った人間から出たとは思えないくらい大きな音だった。
考えれば蛭町に取り込まれた連中は体が接合されている。つまり痛みも共有しているってことなんだ。
俺は右手を見る。
そこには引き千切られた少年の腕があった。
赤い血がタラタラと垂れ落ちる。
ひえひえとくぐもった悲鳴が聞こえ続ける。
俺は高々と千切った腕を持ち上げた。
赤いものが俺の顔に落ちる。そして俺の口に滴が伝う。
美味い……。
気持ち悪いではなく、最初に感じたのがそれだった。
なんだこの甘美な味は。
俺は少年の腕を口元に近づける。繊維が引き千切られ血管や肉がむき出しのグロテスクな切断面。わき出す肉汁。
だけどそれに俺は猛烈な食欲を感じていたんだ。
喰いたい。
生のまましゃぶりつくしたい。
あり得ない欲望が俺の頭の中にわき出す。
そんなのあり得るわけがない。肉はウェルダン。生食なんてありえなかったのに、なんでこんな事が考えてしまうんだよ。いやだいやだ。ありえねえ。
だけど俺の体は俺の支配下にない。必死で否定する俺をあざ笑うかのように腕の切断面が近づけられる。
嫌悪と渇望。其の二つが俺を引き裂こうとする。
俺はゆっくりと切断面に口づけする。僅かな血が唇に触れ、中へと入り込んでくる。
その瞬間、俺の正気が吹き飛んだ。
全身が痺れるような感覚が俺を貫く。
いままで押さえ込んでいたものが一気に復活したようにさえ思える。
腕の切断面を嘗める。舌を皮膚や骨、筋肉繊維を丹念になぞるように。
口中に広がる香り。味覚。そのたびに全身を嵐のような衝撃が走る。
軽く歯を立てて、肉を食いちぎる。コリコリとした触感……。飲み込んだ。
美味い!!
もう制御不能となった。
まるで飢えた獣だ。音を立てて腕に齧り付き肉を引き千切り、飲み込む。
そのたびに電気が流れるかのように衝撃が走る。
同時に傷ついていた部位が一気に回復していくのが分かる。
弱々しい筋肉が、骨が、神経が、皮膚が活性化していく。
骨すらかみ砕いて飲み込む。
【うお。うめー。たまらん】
欲望は止まらない。
再び腕を突き刺すと、無造作に中の人間の体を掴むと、
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