暁 〜小説投稿サイト〜
竜のもうひとつの瞳
第七章〜おつかいを頼まれて〜
第三十三話
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ようとしたわけだ。
私なんか豊臣にとって縁もゆかりもないわけだし、捨て駒にするには丁度いいし。
……キスくらいで絆されたのが癪に障るわ。押し倒すくらいしてやれば良かった、畜生。

 「稲葉山城の件は聞き及んでおる。たった十六人で城を攻め落としたとか。その中に女子もいたとか」

 あー……そこまで噂になってんのか。こりゃやっぱ、しばらく帰れないわ。

 「前置きは良いです。私は一体何をすればいいのですか」

 「詳細を話す前に、そなたが本当に使い物になるかどうかを試させてもらう。
誰ぞ、使者殿から奪った武器を持って参れ」

 その言葉に瞬時に動いた足軽さんを見て、私は何だか軍隊のど真ん中に来たようなそんな気持ちになった。
何ていうか、凄く違和感があるのよね。この人が現れてから。兵達も誰も口を開かないし、主の言葉があるまでは眉一つ動かそうともしない。
動けば静々と着いて行くけれど、それ以外は動きもしないし。

 伊達を基準に物事考えるから良くないのかもしれないけれど、どうも違和感が抜けないというか。
この違和感が何なのかがいまひとつ分からないんだけども。

 ややあって武器を持ってきた足軽に合わせて、牢番が鍵を開ける。毛利に出るようにと促されて、武器をしっかりと渡された。

 もしかして、戦って実力を見るとかそういうアレ?
何かこういう展開、デジャ・ヴ過ぎてもうお腹いっぱいなんだけど……。

 「では、町に行くぞ」

 「は? はい」

 あれ、戦うんじゃないんだ。
何となく毒気を抜かれてしまったような思いを抱きつつ、とりあえず毛利の後を付いて町へと向かうことになった。
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