アインクラッド 後編
圏内事件 7
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「今回《圏内殺人》を演出するために用いた逆棘付きの武器は、グリムロックに依頼して製作してもらったんだな?」
マサキがそう尋ねると、ヨルコは思案するように何度か目を瞬かせ、相方と眼を見交わしてから頷いた。
二人の話では、グリムロックは最初難色を示していたが、諦めず頼み込むと、最初の事件――つまり実際に死亡していたカインズの命日より三日前に、三振りの武器を製作してくれたという。その口ぶりからも、二人はグリムロックのことを、妻を殺害された被害者だと信じていることがうかがえる。そんな二人に「グリムロックこそが真の黒幕なのだ」と言ったところで、簡単に信じないことは明白だった。実際、ヨルコは紺色の髪を振りたくってキリトの説明を否定しようとした。
「あんたたちは、グリムロックに計画を全て説明したんだろう?」
そんなことはお見通しとばかりに、キリトが穏やかな口調で問いかける。キリトの言葉をそのまま飲み込むことに抵抗を覚えたのか、ヨルコは頷きつつも顔全体を強張らせていた。再びヨルコが顔を上げるまで、十分に間を取ってからキリトが続ける。
グリムロックが、この事件の真相と、この場所で行われる最終幕を知っていたこと。それを利用して《指輪事件》を今度こそ闇に葬り去るべく、三振りの武器を誂えたこと。そしてシュミットが単独でこの場所に来ているとレッドギルトに情報を流し、《ラフィン・コフィン》の三人を呼び寄せて実行犯として利用したことを丁寧に説明すると、ヨルコはその推論に反論を見出せなかったのだろう、膝から力が抜けて崩れ落ちそうになり、それを傍らのカインズが支えた。
「グリムロックさんが……私たちを殺そうと……? でも……なんで……? そもそも……なんで結婚相手を殺してまで、指輪を奪わなきゃならなかったんですか……?」
月明かりの下でも分かるほど真っ青な顔で、うわごとのように漏らしたヨルコの言葉は、三人全員の心を代弁したものだっただろう。シュミットも、カインズも、うつろな瞳をこちらに向けながら、茫然自失という雰囲気でピクリとすら動かなかった。
三人分の視線全てを浴びながらマサキが一歩前に出ると、新たに丘の西側に浮かび上がった三つのカーソルへ視線を投げながら言葉を返した。
「……俺たちにも、動機までは推測できなかった。その辺りは……、本人に、直接聞いてみるべきだろうな」
マサキの言葉に続いて、ヨルコたちもマサキの投げた視線の先へ目を向ける。
程なくして、こちらに向かって丘を登りつつある足音が耳に届いた。それからさほど間を空けず、二人の女性プレイヤー、エミとアスナが目に映る。二人とも手元には抜き身の剣を携え、その切っ先は一歩前を歩く男に油断なく向けられていた。
痩せ型で、かなりの長身だ
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