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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
圏内事件 7
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かを愛するってことは、その誰かに、何かを求めることじゃない。その人と一緒にいるだけで楽しくて、笑顔になって。その人のことを考えただけで、胸の奥がぽかぽかして。……だから、今度はわたしが、その人を笑顔にしたい。その人に、幸せになってほしい……そう思うことが、わたしは愛だって思います。あなたがグリセルダさんに抱いていたのは、ただの所有欲。……そんなものを、愛だなんて言わないで。そんな薄汚れた欲望で……愛っていう純粋な想いを穢さないで!」
「……あなたがまだグリセルダさんのことを愛しているというのなら、その左手の手袋を脱いでみせなさい。グリセルダさんが殺されるその時まで決して外そうとしなかった指輪を、あなたはもう捨ててしまったのでしょう」

 エミの鋭い言葉の後をアスナが静かに次ぐ。グリムロックの肩が小さく震え、黒い革手袋に覆われた左手を、自らの右手でぎゅっと掴んだ。が、男の手が動いたのはそこまでで、左手の手袋が外されることはついぞなかった。

「……キリト。マサキ。この男の処遇は、俺たちに任せてもらえないか。もちろん、私刑にかけたりはしない。しかし必ず罪は償わせる」

 今まで一言も発することなく状況を傍観してきたシュミットが、立ち上がりながら場の静寂を破った。直後にキリトの視線を感じたので、マサキは黙って頷く。

「解った。任せる」
「……世話になったな」

 キリトが了承すると、シュミットもマサキたちに頷き返し、力なくその場にうなだれるグリムロックを連れて丘を下りて行く。その後に、箱を埋め戻したヨルコとカインズが続く。

「アスナさん。エミさん。キリトさん。マサキさん。本当に、何とお詫びして……何とお礼を言っていいか。皆さんが駆けつけてくれなければ、私たちは殺されていたでしょうし……グリムロックの犯罪も暴くことはできませんでした」
「いや……。最後に、あの二つの指輪のことを思い出したヨルコさんのお手柄だよ。見事な最終弁論だった。現実に戻ったら、検事か弁護士になるといいよ」

 深々と頭を下げたヨルコは、キリトの冗談にくすりと笑って応じた。

「いえ……。信じてもらえないかもしれませんけど、あの瞬間、リーダーの声が聞こえた気がしたんです。指輪のことを思い出して、って」
「……声……」

 マサキはヨルコの口にした単語を無意識に漏らしながら、もう一度深く一礼した二人が丘を後にするのを見送った。ふと、何とはなしに、目線を背後の墓標に泳がせる。
 ――声、ね。
 そんな自分に、マサキは自嘲の笑みを向けた。あるはずのないものを一瞬でも望んでしまった自分が、あまりにも滑稽で。
 馬鹿らしいと空気の塊を吐き捨て、逃げるように背を向けようとしたマサキ。しかしその寸前、思いもがけないものを見た。

 捩れた巨木の根元にひっ
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