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クルタ
第一章
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                  クルタ
 タジキスタンは中央アジアの一国だ、かつてソ連にあった国の一つである。
 今はソ連が崩壊し独立国となっている、イラン系ソグド人が多い。
 そのタジキスタンの平原でだ、タハミーネ=クルガンは首都ドゥシャンベに向かいながら共にいる兄のラスルに尋ねた。二人共それぞれ馬に乗っていて荷物を抱えている。
「お兄ちゃん、売れるかな」
「売れるんじゃないだろ」
 兄は妹にこう返した。
「売るんだよ」
「そうするのね」
「その為に首都まで行くんだからな」
 これが兄の言うことだった。
「そうだろ」
「そうよね」
「折角学校も休んでな」
「それでわざわざ商いに出てるから」
「絶対に売らないと駄目だろ、とにかく今うちはな」
「わかってるわよ、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが続けて死んでね」
 タハミーネは馬上で肩を竦めさせて言った。見ればやや切れ長でそれでいて大きな長い睫毛を持っている琥珀色の瞳にだ。
 黒髪は波がかっていて腰までおさげにして伸ばしている。顎の先が少し尖った顔は雪の様に白く唇は紅で小さい。小柄だがすらりとしたスタイルで厚い赤の上着と黒いズボンという格好だ。ラスルは妹と違い精悍な顔で黒髪を短くしている。背は高くしっかりとしていて服は青の厚い上着と濃い黄色のズボンだ。
「お金がないのよね」
「ああ、葬式代がかかってな」
「最近只でさえ苦しいのに」
「祖父ちゃんと祖母ちゃんが続けて死んでな」
「あと親戚の結婚とか出産も続いてね」
「もの入り続きだからな」
「それで学校まで休んで」
 そしてと言うタハミーネだった。
「商いに出ないといけないのね」
「そういうことだ」
「若し売れなかったら」
「借金をするしかないぞ」
「それだけは避けないとね」
「借金は今はいいがな」 
 借りたその時はというのだ。
「後が厄介だからな」
「そうなのよね、後がね」
「首が回らなくなる話なんて幾らでもあるだろ」
「嫌になる程聞いたわよ」
 タハミーネは首都までの人通りが比較的多い道を進みつつ言った。
「それこそね」
「そうだろ、ソ連の時はまだな」
「そういう話はなかったけれど」
 共産主義だからだ、それで借金とかいう話も縁が遠かったのだ。
「それでもね」
「今は違うからな」
「商いで儲けられるけれど」
「そうしたリスクもあるんだ」
「そういうことね、じゃあね」
「いいな、ものを全部売れ、ただしだ」
 ラスルは強い声でだ、妹にこうも注意した。
「御前自身は売るな」
「結婚はしてもよね」
「そうだ、いいな」
「わかってるわよ、私達の商う品はあくまで雑貨」
「身体じゃないからな」
「それ位わかってるわよ、若し言い寄って来る奴がいたら」
 タハミーネも
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